News Liner(ニュース ライナー)がお届けしておりますラジオ大阪の情報番組「朝かつ」にご登場頂いたゲストの皆様の貴重なお話を掲載しています。

今回は「人的資源管理論」がご専門の和歌山大学経済学部の厨子直之・准教授のお話しの続き。「生活と仕事における満足感の相関関係」の2回目です。厨子先生と研究室(ゼミ)の皆さんが登場しました。

和歌山大学経済学部の厨子直之です。 前回、仕事での満足感=職務満足感と仕事以外での満足感=生活満足感の関係について、3つのモデルをご紹介しました。仕事と生活は相互に影響するという「流出モデル」、仕事と生活は一方で満たされない満足感を他方で満たすという「補償モデル」、仕事と生活は全く領域が異なるため、それぞれは他方の影響を受けないという「分離モデル」の3つでした。

厨子先生 今日は、この3つのモデルのうち、どのモデルが当てはまるのかについて、厨子研究室で実施した調査の結果をご紹介させていただきたいと思います。

ここからは、調査を実際に行ったゼミ生にも参加してもらって、お話しさせていただきたいと思います。本日は梶山駿、畠中紗里、松岡勝己、守口華菜の4名(敬称を略しました)のゼミ生です。よろしくお願いします。

調査を実際に行ったゼミ生をご紹介させていただきます。梶山駿(かじやま・しゅん)、金剛敦子(こんごう・あつこ)、佐藤史織(さとう・しおり)、中えりか(なか・えりか)、畠中紗里(はたけなか・さり)、原田安由美(はらだ・あゆみ)、菱井綾乃(ひしい・あやの)、前田隆(まえだ・たかし)、松岡勝己(まつおか・かつみ)、守口華菜(もりぐち・かな)の10名(敬称略)です。※厨子先生が学生の皆さんを紹介した時と同様に敬称を付けていません。

<ゼミ生>2012年9月12日に、沖縄県にある美ら海水族館オキちゃん劇場の観光客195名(男性109名、女性80名、性別未回答6名)に対して、琉球大学の学生と共同でアンケート調査を行いました。

<ゼミ生>アンケートの内容についてですが、職務満足感については4つの質問で尋ねました。回答者には全て、「1.全く当てはまらない~4.非常に当てはまる」の4段階で評価してもらいました。具体的には、私は、仕事が好きだと感じている、私は、全体的にみて、仕事に満足を感じている、私は、仕事に行くのが楽しいと感じている、私は、仕事には何の不満も感じていない、の4問です。これら4つの得点を合わせて「職務満足感」の尺度としました。

<厨子先生>わざと似たような質問を4回しているのには、理由があります。1問で聞くと、回答者が職務満足というものを異なって解釈する可能性がありますが、それを避けるためです。

<ゼミ生>生活満足感についても、4つの質問で、職務満足感と同様に4段階で評価してもらいました。私は、全体的にみて仕事以外の日常生活に満足を感じている、私は、仕事以外の日常生活が好きと感じている、私は、仕事以外の日常生活を行うことが楽しいと感じている、私は、仕事以外の日常生活には何の不満も感じていない、の4問です。これら4つの得点を合わせて「生活満足感」の尺度としました。

<厨子先生>集められた195名分のデータを用いて、職務満足感と生活満足感の関係を特定するために、SPSSという統計ソフト用いて統計分析を行いました。近年、統計スキルはビジネス・パーソン向けの雑誌でも、テーマとして多く取り上げられるようになっています。ビジネス環境が複雑になり、経験や勘だけでは的確な経営の意思決定ができなくなってきたことが、その背景にあると思われます。こうした状況から、卒業後、社会で有能なビジネス・パーソンの一員として活躍できることを目指して、学部のゼミ生に統計スキルを習得してもらっています。

<ゼミ生>職務満足感と生活満足感の関係を調べるために使ったのが、「相関分析」と呼ばれる手法です。相関分析とは、2つの変数間の関係性を確かめる分析方法です。関係性の強弱を数値化したものを相関係数といい、相関係数がマイナスであれば負の相関関係、プラスであれば正の相関関係であるということがわかります。相関係数の値が0の場合は、2つの変数には何も関係がないことを意味します。ということは、相関係数の値がマイナスの場合は補償モデルが、プラスの場合は流出モデルが、0の場合は分離モデルが、それぞれ証明されることになります。

<ゼミ生>相関分析の結果、職務満足感と生活満足感の相関係数は「0.291」という数値が見出されました。プラスの値ですから、「職務満足感が高まると生活満足感が高まる」、「生活満足感が高まると職務満足感が高まる」という関係が読み取れます。3つのモデルのうち、「流出モデル」の正しさが示されたことになります。

<ゼミ生>しかも、「0.291」という数値は1%水準で統計的に有意であることが確認され、このことは職務満足感と生活満足感のプラスの関係が偶然によってたまたま起こる確率が1%で、99%の確率で流出モデルに妥当性があることを意味します。

【厨子先生のまとめ】 「仕事でハッピーだと仕事外での生活もハッピー」、「仕事外での生活がハッピーだと仕事でもハッピー」――今回の分析結果のポイントは、ワーク(仕事)の充実が、労働生活全般を豊かなものにするということです。ワーク・ライフ・バランスというと、どうしても“ライフ”(生活)の方が注目されます。今回の調査結果から、ワーク・ライフ・バランスの質を向上させるために、個人も企業もワーク(仕事)の重要性を改めて認識し直していただく必要があると思います。