5月を彩る花々 初夏のハノイは色彩豊か

初夏を迎えた5月のベトナム北部は、国の花であるハスが満開になるなど、色とりどりの花が見ごろになります。学校などの卒業シーズンでもあるので、この時期に咲く花に、ベトナム人は「別れ」や「学生」のイメージを重ねて見ることも多いようです。(VNLハノイ)

ベトナムの国花は、ハスです。花の色はピンク色と白色がありますが、ピンク色の花のほうが多く見られます。ベトナムのハスの葉はとても大きくて、田舎などでは今でも、農家の人たちに帽子がわりに使われています。花はごはん茶碗ほどの大きさで、花が咲いていくと、何枚も重なった花びらの間から黄色の雄しべが見えてきます。雄しべは、とても香りがよいので、ハスの花びらと雄しべは、よくお茶の風味と香りづけに用いられます。この「ハス茶」は昔から人気ですが、最近ではハスの花の香りは、ボディーソープや化粧品などにも使われています。

花の後のハスの実とレンコンは、料理に使われます。このように、ハスは美しいだけでなく、食料などとしても便利で、池の泥の中に咲くのに泥の匂いがせず、香りがよいので、その力強さや美しさなどから、ベトナムを代表する花だと言われているのです。

ハスが見ごろなのは5月いっぱいです。美しくさいているひと月ほどの間、ハノイの人々はハスの花を自宅などで飾ったりするだけでなく、池に咲く花を見に行ったり、記念写真を撮ったりして満喫します。

この時期は、ベトナムで学年末や卒業の時期にあたるので、このころに咲く花は「学生」や「卒業」「友だちとの別れ」を連想させます。それらの花の木の代表的なものが、次にご紹介するフォン、バンランとホアンイエンの花です。

フォンの花は、何千もの花が房につながって咲く、真っ赤な花です。ちょうどベトナムの学年末と卒業の時期に咲くので、「Tạm biệt(さようなら、別れの意味)」の花とされ、学生をイメージさせる花です。

特に、学校を卒業する学年である中学校4年生と高校3年生たちは、友だちと別れることになるので、赤いフォンの花とともに写真を撮り、別れを惜しんで泣いている姿を見かけます。学生たちは卒業記念の冊子やアルバムなどに友だち同士でお互いに記念の言葉などを書き合うのですが、そこに赤いフォンの花びらを貼っておく人もいます。

紫色のバンランも、5月ごろにたくさん花を咲かせる樹木です。

ハノイの街には多くのバンランの木が街路樹として植えられています。紫色のバンランの花を見ると、心に残る記念日や懐かしい思い出などが思い浮かびます。

最後にご紹介する黄色の花は、ホアンイエン。5月以降、比較的長い期間咲く花です。

このようにホアンイエンは学校や大学などの敷地内に植えられることの多い木です。そのため、学生たちは卒業式の後などに、この木の前で、思い思いに写真を撮影します。

4月の桜が日本で新入生を象徴するように、ベトナムの5月も、ベトナム人にとって深い意味をもつ夏の花々が咲く季節です。この時期にベトナム、特に四季のはっきりとした北部を訪れたなら、名所だけでなく、街の街路樹や花などにも目を向けてみてくださいね。