客船「飛鳥Ⅱ」の魅力 最高の料理 「重視するのはバランスとやさしさ」-西口総料理長に聞く

日本が世界に誇る郵船クルーズ(本社・横浜市)の豪華客船「飛鳥Ⅱ」。華やかなイメージと由緒ある歴史に“まぶしさ”を感じていたが、乗船してみると、そこは最高に居心地の良い場所だった。落ち着きとやさしさ、さらに、逞しさと考え抜かれた緻密さ、勤勉さと誠実さがそこにはあった。

天候にたじろぐことなく、目的地に向かって安全かつ快適に進む「飛鳥Ⅱ」はタフそのもの、抜群の安心感だ。洗練された美しい船内は、客室をはじめ、どこも清潔感にあふれている。乗組員の方々のサービスは自然で、真心がこもっていた。

「飛鳥Ⅱ」の西口雅浩総料理長にお話しを伺った。

――西口総料理長は長年にわたり、「飛鳥Ⅱ」で最高の料理を作ってこられました。

「初代飛鳥」の就航時にお話を頂きました。元々、東京のホテルに勤めていたのですが「豪華客船を、しかも『日本一のもの』を作りたい。フレンチのフルコースを出せる船を作りたい」というお話に「これはやり甲斐があるな」と感じ、参加しました。「飛鳥」から「飛鳥Ⅱ」になりましたが、あっという間の26年間でした。基礎は陸のホテルで学び、その後はずっと船で勉強させて頂いています。

――総料理長の御家は代々「総料理長」を務めていらっしゃるとか。

わたしは「総料理長」としては4代目です。ホテルなどの総料理長を務めている「家系」と言えば「家系」ですね。「中々、珍しい」と言われます。曾祖父の代から、ずっと東京のホテルで総料理長を務めさせていただいています。

――お父様たちが勤務されていたホテルは、皆さん違うのですか。
そうですね。みな違いますね。帝国ホテルをベースに動いていることが多いのですが、わたくしは別のホテルで修業をしまして、その後、飛鳥に来ることになりました。

日本郵船のHPに記載された「History 0f 日本郵船」の第一章に「日本の洋食の源流」について記述がある。

日本郵船の客船サービスは世界トップクラス、特に食事のすばらしさには定評があった。帝国ホテル、精養軒と並び日本郵船が日本の洋食の源流と評されるのは、船の厨房で鍛えられたコックが下船して広くその味を伝えたため。よく知られるのはカレーライスに福神漬けというアイデア。日本郵船のあるコックの発想によるもので、福神漬けは以後、大いに売れたという。

飛鳥Ⅱクルーズでは、やってみたいこと、参加したいことが数多く存在する。寄港先では観光ツアーに出かけたいし、船内では各国の優れたエンターテイナーが出演する飛鳥Ⅱオリジナルの「プロダクションショー」が必見だ。社交ダンスやウクレレ、マジックなど船内で開催されるさまざまな文化教室やスポーツイベント、学術講演会にも参加したい。夜は陸上の光に邪魔されることがほとんどない船上ならではの「星空観測会」も楽しい。夏には船上から花火も観賞できる。クルーズをより楽しむには体調管理は欠かせないだろう。

――飛鳥Ⅱのお料理は本当に美味しいです。前菜からデザートまで、時間をかけてしっかりと頂きましたが、「おなかが重くなる」ということは、ありませんでした。クルーズ中のアグレッシブな行動は、料理が支えてくれたように感じます。

ありがとうございます。料理のバランスと「体に優しい料理」と言いますか、「ほっと」して頂けるような料理を目指しております。「体に優しい」という面では、味付けもあまり激しい味付けにはしないようにしておりまして、お客様の健康を第一に考えております。例えば、観光ツアーなどで、疲れて帰ってこられる、特に外国の場合がそうなのですが、お客様も緊張なさっている時があります。飛鳥Ⅱに帰ってこられた時にほっとして頂けるように和食の会席をお出ししたり、家庭料理のような献立にすることもあります。バランスを大切にしております。

――飛鳥Ⅱでは、800人を超える乗客が、原則2回に分かれて「フォーシーズン・ダイニングルーム」でのディナーを楽しんでいました。次々と訪れる乗客全員に最高のコンデイションの料理を出されたことには驚きました。

ありがとうございます。やはり、26年間におよぶ蓄積があります。どうやったら、広いレストランの中で、お客様に「冷たい料理は冷たく」、「温かい料理は温かく」、常に最高のサービスができるように、いろいろなノウハウをこの26年間で培いました。お客様には満足して頂いていると思います。

――訪問先や寄港地をイメージさせるような料理も楽しめました。

そうですね。それは船旅の楽しみの一つでもありますので、寄港地のおいしいものは、なるべく取り入れるようにします。国内ですと比較的やり易いのですが、海外の時でも、国ごとの料理をご提供したり、(その国ならではの)食材を使ったりして、お客様に満足して頂けるように心がけています。

《つづく》