夏にお勧めの観光地、ベトナム中部フーイエン省 自然の造形美と海の幸が国内旅行客に人気

ベトナム南中部のフーイエン省は、まだ海外では知名度は低い場所だ。しかし、ベトナム人旅行客の間では人気が急上昇している。山や海の美しい景観や自然美、おいしい海産物、文化やリゾートといった多様な楽しみ方ができるとあって、国内有数の観光地に成長しつつある。(VNLハノイ)

フーイエン省を象徴する観光スポットが、ドンホア郡ホア・スアン村にあるブンロー(Vũng Rô)湾=写真㊤だ。ベトナム南中部の東シナ海に面し、約16.4平方キロメートルの水面を持つ小さな湾。周囲をデュオカ山、ダビアー山、ホンバー山などの高い山々に囲まれ、独特の景観をつくりだしている。
世界観光機関(WTO)が、「アジアで最も美しい場所の一つ」と評価したのが、この湾だ。

抗米救国戦争(ベトナム戦争)の間、ブンロー湾は物資を運ぶための海上ホーチミンルートの重要な要衝となっており、「赤い住所」と呼ばれていたのだという。南ベトナムにいた民族解放戦線(NFL)に向けて武器を供給していた輸送船「番号無し船(Tàu không số)」の停泊拠点だったのだ。

湾には、これを記念した塔がある。記念塔は船の形をしていて、その船の先は、南方向を向いているという。

ブンローの湾内には、岩に囲まれた静かな美しいビーチがいくつもある。その中でも、砂が白く、細かいモン・ビーチ=写真㊦=は、特に美しいことで知られ、人気が高い。海の透明度も高く、船から見下ろすと、魚やサンゴ礁が見える。

フーイエン省で、もうひとつの見逃せない景観が「ダーディアの奇岩」(Ghềnh Đá Đĩa)だ。2平方キロメートルにわたって、奇妙な岩がそびえ、もっとも水幅の狭いところは約50メートルほどしかない。ここは海の潮の流れがとても速いことでも知られ、ベトナム語名のゲイン(Ghềnh)は、「急流」という意味だ。

ダーディアの奇岩は、火山から押し出されたマグマが冷えて六角形の柱状に固まった「柱状節理」とよばれる地形だ。遠くから見ると、無数の階段が海に浮かぶように見える。

フーイエン省の気候は、はっきり2つにわかれている。9月~12月までの雨季と、1月~8月の暑い季節。観光するならこの時期がおすすめだ。

フーイエン省などベトナム中部では、ユネスコの世界無形文化遺産に認定された民俗芸能「バイチョイ(Bài Chòi)」を体験することもできる。

美しい観光地や地域の文化を楽しんだら、フーイエン省の海産物も逃してはならない。この辺りは魚介類の種類が豊富で、味もよいとされ、市場などでは豊富な種類の新鮮な魚介類が並ぶ。特に名産のマグロの刺身はとてもおいしい。

ベトナムを訪問した際には、まだまだ外国人観光客の少ないフーイエン省まで、足を伸ばしてみてはいかがだろうか。きっと、知らなかったベトナムの魅力を、たくさん発掘できるだろう。