国賓として来日したベトナムのチュオン・タン・サン国家主席は19日、関西を訪問、大阪市内のホテルで開かれた「日本・ベトナムビジネスフォーラム」(主催=大阪商工会議所、ジェトロ大阪本部、日本商工会議所、ベトナム商工会議所、在大阪ベトナム総領事館)に来賓として出席した。

フォーラムは「ベトナムの裾野産業における日本の中小企業の役割とチャンス」がテーマで、大阪商工会議所の佐藤茂雄会頭、在大阪ベトナム総領事館のレー・クオク・ティーン総領事が開会挨拶を行った。

続いて、登壇したチュオン・タン・サン国家主席は「経済の中心地であり、生産・製造における一流の企業の集積地である大阪を訪問出来て、大変うれしく思います。多くの方々がフォーラムに出席されたことは、経済協力を含む両国(日本とベトナム)の関係について、経済界の皆さんに関心を持って頂いた証だと思います。昨日(18日)は国会で演説し、安倍晋三首相と首脳会談を行いました。さまざまな分野で信頼し合うことができました。両国の新たな時代の展望は明るい。このフォーラムで、『ベトナムが日本にとって信頼できるパートナーである』との認識を共有することが出来たと思います」と述べた。

その後「日本・ベトナムのさらなる経済関係強化に向けて~ベトナムの裾野産業における日本の中小企業の役割とチャンス、課題と挑戦」をテーマにシンポジウムが開かれた。

この日は、フォーラムに先立って「サン ベトナム国家主席との懇談」(主催=関西経済連合会、大阪商工会議所、京都商工会議所、神戸商工会議所、堺商工会議所、ベトナム商工会議所)が行われた。

チュオン・タン・サン国家主席、ファム・ビン・ミン副首相兼外相、ブイ・クアン・ビン計画投資相をはじめベトナム側から約25人が出席。日本側は森詳介・関西経済連合会会長、佐藤茂雄・大阪商工会議所会頭、立石義雄・京都商工会議所会頭、大橋忠晴・神戸商工会議所会頭、前田寬司・堺商工会議所会頭ら約30人が出席した。

森会長は、関経連が企業支援として行っている、ベトナムにすでに進出している、あるいは進出を考えている-という関西の企業をサポートする、政府への問い合わせ・要望窓口である「関西ビジネスデスク」や関西企業のベトナム進出や事業展開の際の課題について、関西の官民がベトナムの政府機関と協議し、解決策を見い出す場となる「関西ベトナムビジネス・ラウンドテーブル」がスタートし、有益な事例を挙げていることなどを紹介。「近年の日本とベトナムの経済関係の発展は目覚ましい。関西とベトナムの新たなる関係強化のきっかけになることを祈念します」と歓迎の挨拶を述べた。

続いて、各商議所の会頭が発言した。大阪商工会議所の佐藤会頭は、ベトナムへの進出を希望する比較的小規模な事業所への支援策など、大商の取り組みを紹介した上で、大阪(関西国際空港)とハノイ、ホーチミンを結ぶ航空路線の増便、ベトナムのさらなる飛躍につながる人材育成の重要性などを提案した。京都商工会議所の立石会頭は、ベトナムが(会員)企業の進出先として年々増加していると述べた。その一方、離職率の高さや裾野産業のさらなる育成などの課題を指摘した。

また、神戸商工会議所の大橋会頭は「各国のビジネス動向を紹介するセミナーで、ベトナムが最も人気が高い」と述べ「製造業では電力の安定した供給が不可欠」として、その重要性を指摘した。さらに、堺商工会議所の前田会頭は、「堺の商人」とベトナムとの交流の歴史や同市内の在大阪ベトナム総領事館との交流について述べるとともに、ASEAN共同体への期待を示した。

サン国家主席は森会長や各商議所会頭の意見などについて、より具体的な回答を担当大臣に求めるなど、さまざまな意見が交わされた。