厨子直之先生 おはようございます。「トイレットペーパーを使っていてちょうど無くなったら、みなさんはどうしますか? 新しいものに替えますよね?」。誰しも日常生活で、何かご褒美がもらえるわけではないけど、「誰かに役に立ちたい」という気持ちがあると思います。

企業の中でも、同じように報酬には直接結びつかないが、自ら積極的に進んで誰かの役に立つような行動があります。たとえば、「上司に言われなくても、仕事が遅れている人を手伝ってあげる」ことです。

こうした「公式の報酬制度で保障されないが、組織の有効性を高める個人の自発的な行動」のことを、組織行動論の学術用語で「組織市民行動」と呼びます。

ラジオをお聞きの皆さんの中には「日本の企業では当たり前では?」と思う方がいらっしゃるかと思います。「集団主義」という言葉に代表されるように、日本企業ではチームワークを大切にし、メンバーで困っている人がいれば、進んで協力して手伝うことを得意としてきました。

一方、欧米では、「This is not my job(これは私の仕事でない)」という言い回しがよく使われるように、自分の役割外のことはやらないということが一般的でした。しかし、公式的に決められた仕事以外の仕事は日常、たくさん出てきて、誰もやらなければ、組織がうまく回っていきません。

欧米企業も限界を感じていたところ、1980年代にアメリカの優良企業の多くは、日本的経営に近い手法を採用していたことを示した『エクセレント・カンパニー』という書籍が世界的に脚光を浴びました。ちょうどその頃に、欧米で組織市民行動に関する研究が進んできました。

日本企業では、90年代に入って成果主義が導入されるようになり、自分の役割以外のことをやらない、というマイナスの行動が見られるようになりました。そこで、日本的経営の良さを、組織市民行動という新しいラベルの概念で見直そうという動きが、日本でも起こったものと考えられます。
ところで、過去の研究では「仕事の満足度」や「メンバーのまとまりの度合い」などの要因が、メンバーの組織市民行動を促すという結果が示されています。

組織市民行動は、企業に入ると自動的にできるわけでなく、学生時代でもそのような行動ができている必要があると考えました。

次回から、厨子研究室で実施したアンケート調査の結果をもとに、学生組織における組織市民行動とそれに影響する要因の関係について紐解いていきます。

Vietnam News Liner 提供 ラジオ大阪(OBC)情報番組「朝かつ!!」から