ベトナムの伝統的なお餅Bánh dẻo(バァン・ゼォ)

「中秋のお祭り」に、ベトナムでは伝統的なお餅(バァン・ゼォとバァン・ヌォン)を食べる習慣があります。ハノイにあるスァン・ディン村を訪問し、約25年間、バァン・ゼォを作っているタイさんとツゥさんご夫妻をたずねました。

ご主人のタイさんは55歳、かつては軍人でしたが退役しました。タイさんは両親そしてお祖父さん、お祖母さんたちの世代からバァン・ゼォの伝統的な作り方を学び、継承しています。タイさんのお父さんはこの伝統的な村を開設した3人の中の一人でした。奥さんのツゥさんは、タイさんと結婚してから、バァン・ゼォの作り方を勉強しました。二人は中秋お祭りに合わせ、旧暦7月初めから8月15日まで伝統的な作業を続けています。

彼らが作るバァン・ゼォは、ほとんどが近所の人や友人、仲の良いお客さんからのオーダーです。代理店などへの販売は行っていません。伝統的な作り方が守られており、保存のための材料は入っていません。新鮮な香りと美味しさが特徴です。

  

バァン・ゼォを作る時、大切な物の一つに「型」があります。「型」は木製で美しい模様が彫られています。金魚、豚、魚、月、花、干支…など、さまざまな型があります。プラスチックの型もありますが、品質の面で木には及ばず、タイさんたちは使っていません。

今日は魚のバァン・ゼォの作り方を見学しましょう。

まず、材料の準備です。材料はもち米、青い豆(đậu xanh、緑豆)=写真、ザボンの花のオイル(香りづけに使います)、白ゴマ、スイカの種(皮をむいた物)です。

  

もち米は粉にします。青い豆は漉(こ)します。丁寧に漉したら砂糖を加え、混ぜます。

  

お鍋に砂糖水、続いて粉を入れて、機械で混ぜます。昔は機械がなかったので手で粉を混ぜていました。機械の方が手軽だし、時間を節約できるようです。機械で約5分間混ぜ、手で仕上げます。

混ぜ合わせ生地を適量に分けます。豆の漉し餡(あん)も分けます。

作っているのを見ていると「自分にも出来るかな…」と思いました。でも、簡単そうに見えるのは、タイさんに25年の経験があるからでしょう。ベトナムには「百を知るより慣れた手」という諺(ことわざ)があります。「多くの方法を本で読んで勉強するより、練習を繰り返し続ける方が良い」と言われています。

 

バァン・ゼォを作るためには、やはり器用さが必要なようです。見ている子供たちも作りたくてたまらない様子でした。読者の皆さんも挑戦してみたいと思われませんか?

薄く伸ばした「生地」に、豆で作った「餡」を入れます。最後に「ふた」をすれば完成です。

「魚」のバァン・ゼォの出来上がりです。ここで紹介したバァン・ゼォは菜食の人でも食べられます。別の種類としては、中にお肉や豚の脂、ハスの実などを入れた物があります。最近は、豆の入ったものが人気のようです。バァン・ゼォを食べる時は、ベトナムの緑茶を飲みながら味わうのがお勧めです。その甘さとザボンの花の良い香りは、きっと、忘れられない味になるでしょう。ハノイを訪問されるなら、ぜひ、召し上がってみてください。

中秋の時期、ハノイではバァン・ゼォとバァン・ヌォンがたくさん売られています。機械で大量に作られたものは見た目と袋は綺麗ですが手作りのものとは、やはり味が違うように感じます。

Photo by: Nguyen Kim Anh
Story: VNL ハノイ