20年の工業化戦略、達成は難しい=日本の人材育成協力を期待-クオン駐日大使

 グエン・クオック・クオン駐日ベトナム大使は5日、都内で「日越広範な戦略パートナーシップの展望」と題して講演し、2020年までに工業国の仲間入りを目指す商工業改革戦略について、電子産業は急速な成長を遂げているものの、裾野産業や自動車部品産業は育っておらず、達成は難しいとの見方を示し、日本側 からの一段の支援を要請した。

 クオン大使は、ベトナムが1986年にドイモイ(改革)を始めてから今年で30周年を迎えたが、国内総生産(GDP)平均伸び率 は約7%で高成長をなし遂げたと指摘。「これまではドイモイのバージョン1だったが、今後はバージョン2で2番目のステップが始まる」と持論を展開。今後は、経済の効率化や国際競争力、生産性の向上が課題となるとの考えを示した。

 さらに構造改革を成し遂げるための突破口として、(1)市場経済に向けた法制度の整備(2)高度なインフラの整備(3)高度人材育成-の三つを指摘した。

 その上でクオン大使は、「これまで日越間の人材育成は政治の約束事だった。今後は経済で各論を実現していかねばらない。地方を回ってトヨタ自動車などにアドバイスを求めているが反応は厳しい」と明らかにした。

 大使は、ベトナムの若者の日本への憧れは強く、 例えば現在、在日留学生は約5万人で、在米、在中留学生の合計4万人よりも多いと指摘した。さらに、明治末期にベトナム民族運動の指導者のファン・ボイ・チャウらが指導した日本に学ぶ「東遊運動」の留学生は200人で、現在は「第2次東遊運動」ともいうべき状態だと述べ、両国間の人材育成協力を加速させたい希望を表明した。

 一方、クオン大使は、日越関係について、主権や領土に関する争いはなく、現状は最良の状態にあると指摘。ただ、最近のフィリピンのドゥテルテ大統領の対米強硬発言などを念頭に、「フィリピンの政策について(日本もベトナムも)かなり注意深く見守っている」とした上で、ベトナムとしては対日協力を深化させる方針を強調した。

 講演は日本アセアンセンターが主催し、約180人が参加した。(時事)