天皇、皇后両陛下、フエ王宮をご訪問 伝統舞楽「ニャーニャック」を鑑賞

ベトナムご訪問中の天皇、皇后両陛下は4日、ベトナム中北部トゥアティエン・フエ省の古都、フエで王宮を訪問された。お二人は、ズエット・ティ・ドウン劇場(閲是堂)で、日本の雅楽と起源を同じくするベトナムの伝統舞楽「ニャーニャック」を鑑賞された。

写真㊤=フエの王宮に向かわれる天皇、皇后両陛下

グエン・ゴック・ティエン文化・スポーツ・観光相、トゥアティエン・フエ省のレ・チョン・ルウ党書記、同省人民委員会のグエン・バン・カオ委員長、フエ遺跡保存センターのファン・タン・ハイ所長らが両陛下をご案内した。

天皇、皇后両陛下は車を降りられると、ベトナムの政府要人らに出迎えられ、地元の市民らの温かい歓迎を受けられた。

両陛下は、フエ王宮のタイ・ホア王宮を参拝された後、日本の雅楽と同じ音楽的起源を持つベトナムの伝統舞楽「ニャーニャック」を鑑賞された。

ニャーニャックは、ベトナム最後の王朝だったグエン朝(1802~1945)の宮廷音楽で、祭事などで演奏されてきた。2003年にはユネスコの世界無形文化遺産に登録されている。

歴史書などには、紀元8世紀ごろにベトナムの僧侶が訪日してニャーニャックを広め、交流したと記されている。日本の雅楽はこのようにアジア各国の音楽が融合して発展し、現在でも皇居での行事や神事、春・秋に行われる園遊会などで披露されているという。

両陛下を案内したフエ遺跡保存センターのハイ所長によると、2007年に当時のグエン・ミン・チェット国家主席が訪日した際、ニャーニャックの演奏者が同行し、皇居で演奏したことがある。両陛下は、日本の雅楽がベトナム音楽に起源をもつと聞かれ、ニャーニャックの伝統音楽をとても気に入られたという。

ハイ所長は、「日本の天皇がベトナムのフエの王宮を訪問されたことは、ベトナムにとって名誉なことだ。天皇、皇后両陛下に、世界遺産にも承認されたベトナムの遺産や歴史の独自性、文化の豊かさを理解していただけた」と話した。


伝統舞楽「ニャーニャック」を鑑賞される両陛下

古都フエを省都とするトゥアティエン・フエ省は、日本と約20年来の協力関係を保っており、その関係が最近、飛躍的に強まっている。自然災害の被災地支援、遺産の保存、交通や給水などのインフラ整備、教育・医療などの面で協力が続けられており、同省への政府開発援助(ODA)は日本がもっとも多い。現在は6案件が進行中で、約5億750万ドルが提供されている。

最近では、「トゥアティエン・フエ省の水環境改善プロジェクト」の第2フェーズで、日本国際協力機構(JICA)から、240億円の支援を受け、同省や近隣の省での洪水を防ぐための排水や給水システムの改善などが行われている。また、フエの城塞やフウ・トン遺産(ミンマンの墓)などの遺跡修復に、450万ドルの支援を得ている。

フエを訪問された天皇、皇后両陛下は、古都の歴史や文化、景観などを堪能されたほか、同省で文化的・社会的支援を行うJICAのボランティアチームにもお会いになった。また、この後、天皇、皇后両陛下は、フランスの占領したで独立運動を展開し、ベトナムの青年らに日本への留学を勧めたファン・ボイ・チャウの記念館(フエ市チョンアン地区)を訪問された。

天皇、皇后両陛下のフエご訪問は、ベトナムとフエ省に対する両陛下の親愛の情の象徴であるだけではなく、両国の関係の歴史にとっても大切な出来事となった。アジアの平和のための戦略的パートナーとして、日本とベトナム両国の関係はさらに強まっている。