APEC各国が観光会議 持続可能な観光を模索 ハロン湾で

今年ベトナムで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC2017)の枠組みのひとつである「持続可能な観光に関するハイレベル会合」が6月18日、19日、北部クアン二ン省の観光地、ハロン湾で開催された。会議にはAPEC各国の代表者約150人のほか、国連世界観光機関(UNWTO)、国際航空運送協会(IATA)、国際自然保護連合(IUCN)の関係者らも参加した。

APECでの観光をめぐる協力は1991年に始まり、2000年に初めてのAPEC観光大臣会議が韓国で開かれた。このとき作られたAPEC観光憲章が、APEC各国の観光協力の基板となっている。APEC観光大臣会議は2年ごとに開催されており、会議では、観光を経済の重要な柱と目する各国の決意を表明。文化交流、相互理解、協力、地域の平和安定のための活動などが紹介され、2006年にはホイアンで、「APEC観光協力促進宣言(ホイアン宣言)」が採択されている。

国連世界観光機関によると、APEC各国の観光地は2016年、前年より6.1%増の約4億1500万人の海外観光客が訪問した。また、世界観光協会によると、2016年における観光は、APECのGDPに対して約1兆3000億ドル(前年比3.7%増)もの貢献をしており、6700人(同6.1%増)の雇用を創出している。

ベトナムは、APECに積極的に関与し、観光面においても、各国との間に良好な関係を築いてきた。例えば、9カ国へのビザ免除政策のほか、残る3カ国とは電子ビザの承認実験を展開するなど、観光客誘致に向けた良い条件づくりが行われてきた。この結果、2016年の海外からベトナムへの来訪者のなかで、もっとも多かったのがAPEC10カ国からの観光客だった。

国連総会は、2017年を「発展のための持続可能な観光年」としており、今年1月には、UNWTOがこれをスペイン・マドリードで公布した。これを受けて、ベトナムは秋に時刻で開催されるAPEC2017の枠組みの中で、ハイレベル会合主催のイニシアチブを打ち出した。1977年には、持続可能な観光に関する高級官僚会議が初めてニャチャンで行われており、今年2月には、持続可能な観光に関する技術会合も開催されている。

会議では、ベトナムのグエン・ゴック・ティン文化・スポーツ・観光相が議長を務めた。ティン大臣は、「観光は経済発展の重要な柱の一つで、APEC加盟各国においても重要な役割を果たしている」とあいさつ。「持続可能な観光にむけた政策策定におけるベトナムの地位確立に貢献したほか、域内の各国の協力効果を高め、統合する機会となった」と評価した。

会議では3つのセッションが行われた。

第1セッションでは、変化の激しい世界情勢において、持続可能な観光発展が目指すことについて議論。UNWTOのプログラム・リーダー、ダーク・グラッサー氏がAPEC経済に対する提言を発表した。セッション2では、APECの持続可能な観光発展のビジョンがテーマ。世界持続可能な観光協議会のダーバンド氏が、同協議会の基準システムなどを紹介した。

APEC本会議で首脳らによる、持続可能な観光発展宣言の採択を目指すセッション3でも、さまざまな提言や発表が行われた。持続可能な観光の発展原則、インフラとサービス発展における官民のパートナーシップ推進、消費需要に関する提言などがテーマに扱われ、観光事業の持続可能な生産や発展の調査、新技術活用の研究が話し合われた。

会議が開催されたクアンニン省は、ユネスコの世界遺産にも登録されたハロン湾をかかえるベトナムでも有数の観光地だ。同省人民委員会のグエン・ズック・ロン委員長は会議でクアンニン省を紹介すると、「クアンニン省は国際的な観光地としてさらに向上するための道を模索している」などと現状を説明した。