ベトナム人被告は公判続行=金正男氏殺害、起訴取り下げず-マレーシア

 【クアラルンプール時事】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が2017年にマレーシアで殺害された事件の公判が14日、クアラルンプール近郊の高等裁判所で開かれ、公訴権を握るトミー・トーマス司法長官は殺人罪に問われたベトナム人女性ドアン・ティ・フオン被告(30)の起訴取り下げ要請を却下した。裁判は続行が決まった。

 実行犯とされた2人のうち、インドネシア人女性は11日に起訴が取り下げられており、明暗が分かれた。フオン被告は却下を受け、法廷で涙を見せ「気分が悪い。何が起きているのか分からない」などと体調不良を訴えた。同被告側は次回公判が開かれる4月1日までに再び起訴取り下げを要請する。ベトナム政府も引き続き、釈放を働き掛けるとみられる。
 検察側は起訴を撤回しなかった理由を明らかにしなかった。フオン被告の弁護人は「差別的な取り扱いに失望している」と憤った。
 起訴状などによると、フオン被告は17年2月13日、北朝鮮国籍の男4人と共謀し、クアラルンプール国際空港で正男氏の顔に猛毒の神経剤VXを塗り付けて殺害したとされる。主犯の北朝鮮国籍の男らは事件直後に出国し、真相解明は極めて困難な情勢だ。 
 マレーシアの現行法では、殺人罪で有罪になると死刑が適用される。フオン被告は「いたずら動画に出演すると思っていた」などとして一貫して無実を訴えている。
 フオン被告とともに殺人罪で起訴されていたインドネシア人のシティ・アイシャさん(27)は11日に釈放されて帰国した。検察側がアイシャさんに対して起訴取り下げという異例の決断を下した背景には、インドネシア政府によるマレーシア側への働き掛けがあった。

 ◇金正男氏暗殺事件をめぐる主な動き
【2017年】
 2月 9日 マレーシアの離島で金正男氏と朝鮮系米国人が面会
   13日 クアラルンプール国際空港で殺害
北朝鮮国籍の男4人がマレーシア出国(後に指名手配)
   15日 ベトナム国籍の女ドアン・ティ・フオン容疑者を空港で逮捕
   16日 インドネシア国籍の女シティ・アイシャ容疑者をホテルで逮捕
   17日 北朝鮮国籍の男を逮捕
   24日 マレーシア警察、遺体から神経剤VX検出と発表
 3月 1日 マレーシア検察、女2人を殺人罪で起訴
    3日 北朝鮮国籍の男を証拠不十分で釈放
    6日 マレーシア政府、北朝鮮の姜哲駐マレーシア大使を国外退去
   31日 遺体をマレーシアから北朝鮮に搬送
10月 2日 女2人の初公判、無罪を主張
【18年】
 8月16日 裁判官が公判続行を決定
【19年】
 3月11日 検察側がアイシャさんの起訴取り下げ、即日釈放
   12日 ベトナム政府がフオン被告の釈放を要請
   14日 マレーシア司法長官、フオン被告の起訴取り下げ要請を却下