G20 参加で来日のグエン・スアン・フック首相 安倍首相と人材育成や貿易促進を協議 覚書なども署名

20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)のために来日していたベトナムのグエン・スアン・フック首相は、7月1日、東京の首相官邸で安倍晋三首相と会談した。天皇陛下のご即位とG20 サミットの成功を祝い、「日本は信頼できるパートナー国」などと挨拶したほか、特定技能資格での在留資格について協力覚書を交わすなどした。

フック首相は、安倍首相に、早期のベトナム訪問と、2020年に開かれるASEANサミットへの出席を要請し、安倍首相は快諾した。

迎えた安倍晋三首相は、これまでのベトナムの外交的役割と実績、サミットでの積極的な貢献などを高く評価。日本に在住する33万人のベトナム人が両国関係の貴重な財産になっているとしたうえで、ベトナム人の生活や学習、就労などで有利な条件を整えたいと支援を約束した。

両国は会談に先立ち、医療、教育、人材開発、財務などのさまざまな分野にまたがる協力協定に調印した。特に人材面では、両政府は「特定技能」の在留資格者に関する協力覚書を交換。悪質仲介業者の排除などが実施できるようにした。また、双方の国で服役する受刑者の交換協定にも署名した。

安倍首相は、公務員教育や職業訓練、競争力の向上、労働生産性の改善、行政改革、電子政府の構築支援、気候変動への対応などのさまざまな側面から、引き続きベトナムを支援すると話した。これらの実施と発展につなげるため、日越間での高級実務者会談を継続することで合意した。国防や安全保障などの面でも、引き続き協力する。

両国は、ベトナムでの政府開発援助(ODA)を受けたプロジェクトのより効果的な実現や、官民パートナーシップ(PPP)の活用促進などにおいて、二国間でさらに協力する方針を確認した。ベトナムは引き続き、日本側に円滑で明白、かつ便利な投資環境を提供していくとした。

経済面では、貿易や投資などが話題の中心で、ベトナムの日本へのライチ輸入の許可申請手続きを進めることで一致した。ベトナム産のロウガン(竜眼)やミルクフルーツ、パッションフルーツの輸入許可も求められており、ベトナム側は農産物の品質を高め、ハイテク農業を発展させるとした。対して、日本側はベトナムに、日本産のみかんやりんごの輸入許可を求めた。

国際協力の側面からは、安倍首相は、ベトナムが国連安全保障理事会の非常任理事に選出されたことを祝福。ASEAN2020の議長国となることをふまえ、ASEAN諸国とメコンデルタ地域関係を強めるための協力や、環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)、地域包括的経済連携協定(RCEP)などの実現に協力すると表明した。南シナ海問題や北朝鮮情勢などの国際問題などについても意見を交換した。


G20契機に日越貿易躍進へ 高まる期待
ド・タン・ハイ商工副大臣によると、日本は現在、ベトナムにとって、米国、中国に続く輸出国第3位となっている。ベトナムへの商品輸入でも第3位につけており、G20を契機に、今後さらに両国の関係が強化するとの期待が高まっている。

統計データによると、2019年の1~5月には、日越二国間の貿易総額は、152億8000万ドルに達し、前年同期と比べて3.7%増加した。このうち、日本によるベトナム製品の輸入は、73億5000万ドルだった。

ベトナムから日本への輸出では、衣料品や衣料用繊維、自動車部品、機械や部品類、魚介類、木製品、靴などが主流だった。輸入では、コンピューター、電子機器や部品、鉄鋼、バイク部品などが目立った。

商工省アジア・アフリカ局のレ・ホアン・オアイン局長は、日本への輸出に関して、「日本の輸入基準、特に食品や魚介類、農産物などの品質や安全の基準は厳しい」と指摘。「だが、日本市場に参入するためには今後、ベトナム企業は、このような品質や衛生の基準を満たす必要がある。さらに、輸出の許可申請、技術障壁の有無などにも十分注意しなければならない」とした。

ベトナム企業には、市場動向や需要について学び、しっかりとしたマーケティング戦略を構築することに加え、良好なパートナーを見つけられるよう、積極的に政府が企画する貿易促進イベントなどへの参加を呼びかけた。

G20 期間中には、グエン・スアン・フック首相やベトナム高官らが、日本の企業経営者らと意見交換する場が設けられ、ベトナムのビジネス環境が日本でアピールされた。特に再生可能エネルギーや観光、IT分野などへの投資を促したという。