ベトナム人労働力の海外派遣、回復に向け協議始まる

新型コロナウイルスの世界的なまん延で、海外で働くベトナム人労働力の多くは、帰国を余儀なくされ、新たな派遣も中止された。ベトナム国内の感染が抑制されていることから、政府は派遣の再開に向け、マレーシアなど同じく感染の少ない受け入れ国と協議を始め、回復への期待が高まっている。

マレーシア政府はこのほど、人の国際移動の制限を解除する方針を公式に発表し、新型コロナウイルスの感染拡大前にマレーシアで就労していたベトナム人労働者について、「8月末以降の再入国を認める」とした。韓国や台湾へも、労働者らの再入国を、近々、認めるための手続きが行われている。

ベトナム労働・傷病兵・社会省(MOLISA)傘下の組織で、ベトナムの労働者らの海外への送り出しを管理する海外労働局(DOLAB)が発表した。

このほど行われた会合で、グエン・スアン・フック首相も、ベトナムの労働力を必要としており、なおかつ新型コロナの感染が収まっている国に限って、ベトナム労働・傷病兵・社会省が労働者を再派遣するための手続き開始を指導した。

海外労働局のグエン・ジア・リエム副局長よると、コロナまん延期の前は、海外で働くベトナム人労働者の9割がマレーシア、韓国、台湾の三国だったという。韓国や台湾の企業は、できるだけ早く生産を本格的に再開するためにベトナム人労働者の早期帰国を希望。韓国雇用労働部傘下で外国人労働者の受け入れや職業訓練団体の「韓国人材開発サービス(HRD)は先月、ハノイ市やホーチミン市、ダナン市で韓国語能力試験を開催し、ベトナム人労働者の早期受け入れ再開をにおわせた。

リエム副局長は、日本でも、特に農業、高齢者介護、食品加工などの分野でべトナム人の労働力へのニーズが高まっていると分析。日越間でも、労働力の入国解禁を今月末または8月初旬に再開させるため、交渉が進められている。

労働者の海外向け派遣機関の業界団体、ベトナム労働力輸出協会(VAMAS)のファム・ドー・ニャット副会長は、「日本がもうすぐ労働者受け入れを再開する見込みであるなど、労働者派遣市場には回復の兆しが見られる」と説明する。このような動きを受けて、労働者を送り出す側の企業は、市場が欲する人材を迅速に派遣できるよう、準備を進める必要があるとしている。

今後は日本側と、ベトナム人労働者が新型コロナウイルス感染例の少ない地域で就労できるよう、柔軟な対応を協議していくという。

6月半ば、ホアンロンCMS社は、台湾のKymco社の求めに応じ、同社グループの電動バイク組み立て工場での就労のため、29人を送り出した。ホアンロン社のギエム・クオック・フオン社長によると、これらの労働者らは住宅が供給され、実際の仕事再開まで2週間は、隔離される予定という。

海外向けの投資や労働者派遣を行うInterserco社のブー・タイン・ハイ社長は、台湾に労働力を移動させるための手続きを始めており、今月じゅうには完了する予定だという。複数の台湾企業が、受け入れたベトナム人労働者が隔離期間を過ごせる場所の確保も行っている。

ベトナム政府は今年、13万人の労働者を海外へ派遣する計画だ。しかし、新型コロナの影響で、今年上半期に派遣できた人数は3万3500人に過ぎず、前年同期比40%減にとどまっている。5月ひと月でみると、海外へ渡れた労働者はたった126人だった。

新型コロナの影響で、今年上半期に海外各国からベトナムへと帰国した労働者は5000人だった。