ベトナムの在外公館、積極的な“経済外交”展開 企業支援や輸出促進など

ベトナム外務省傘下にあり、各国に設置されている大使館などの在外公館が、外交策の一つとして、開設先への輸出促進や市場開拓、投資誘致などの活動を強化している。ベトナム企業を海外市場との橋渡しがねらいで、業界団体や企業の需要をくみ上げ、具体的な支援策に結び付けようとこのほど、在外公館と企業関係者らの交流会が開かれた。

◇経済外交を積極展開
交流会には、在外大使館で企業や経済支援を行う商務部や政府代表団などのベトナム在外公館と、国内の業界団体や企業が出席した。あいさつしたダン・ミン・コイ外務副大臣は、「経済面での外交は、今やベトナム外交の重要な柱のひとつだ」と語り、商務部などの組織が、将来有望な海外の新規市場の開拓に加え、国際紛争の解決などでも、迅速かつ活発な支援を展開していることを紹介した。

ベトナムでは、ホーチミン市とメコンデルタ地域が、経済成長の推進力となっており、防衛政策や社会保障などを維持する原動力ともなっている。昨今ではこれらの地域の工業化が目覚ましく、ベトナムの国内総生産(GDP)の45%を生産し、貿易面でも国の総輸出額の約50%を占めるなど、南部の重要性が増している。また、メコンデルタ地方では農業、貿易、サービス産業、魚介類などの食品加工、コメの生産などが盛んで、ベトナムが輸出する魚介類の70%、輸出用のコメの90%は、この地域で生産されている。

世界各地で経済統合が進むなか、在外公館は、さまざまな自由貿易協定が生む新たな機会を生かすことに尽力。16もの自由貿易協定に署名しているベトナムは、世界人口の59%が暮らし、世界貿易の68%が行われる国や地域と、自由な貿易を展開できる状況で、貿易から大きな恩恵を享受することができる。

◇ピンポイントで迅速な対応を
このような好機を生かすため、在ベルギー・ベトナム大使館のグエン・バン・タオ大使は、「企業は、大使館など在外公館に対して、自社が直面する問題や課題などについて、早期に、できるだけ正確で具体的な情報を提示してほしい。そうすれば、大使館が該当国の機関などに相談したり、対応を求めたりといったピンポイントの行動が迅速に行える」と企業に呼び掛けた。

ベトナム商工会議所のボー・タン・タイン副会頭は、「ベトナム国内の企業と海外の橋渡しをしてくれるほか、海外市場向けにベトナム製品の販売促進活動を展開するなど、各国の在外公館の支援と協力は本当にありがたい」とその活動を称えた。

海外公館は、ベトナム企業らを法的に支援し、情報提供などにより、企業が海外市場の特性などを理解する手助けを行っている。環太平洋パートナーシップに関する先進的かつ包括的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)や欧州連合・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)などの自由貿易協定が生むチャンスを逃さないためにも、企業や業界団体が在外公館に対して、自社製品の紹介や主要市場の企業などとの提携支援を要請するなど、具体的な交流も活発化している。

ホーチミン市ビジネス協議会のチャン・ベト・アイン副会長は、「ベトナム企業の海外進出には、海外市場の傾向や輸出入規制などに関する最新情報の提供をはじめ、海外公館の支援が不可欠だ。ベトナム企業に、輸出先の政治変化などの情報に加え、輸出品や食品の安全衛生基準や企業の社会的責任の追及、環境保護の実施などの規定についても、詳細な情報を積極的に発信してほしい」と求めた。