日本の菅首相がベトナム訪問 フック首相と会談

ベトナムのグエン・スアン・フック首相は19日、東南アジアを歴訪している日本の菅義偉首相をハノイで迎えた。会談した両国首脳は、日越二国間の幅広い戦略的パートナーシップについて意見を交わし、今後、両国の関係をさらに深めるための方向性や具体的な措置などで合意した。

会談の冒頭、グエン・スアン・フック首相は、日本政府による、ベトナム中部地方の洪水被害への支援に謝意を示した。続いて、経済や情報技術(IT)などの分野での両国の接点を含め、さまざまな分野での二国間の関係をさらに緊密していくための具体的な手法などを提案した。

さらに、日本企業によるベトナム国内での事業展開が成功するよう、ビジネス環境を改善し、可能な限りの支援をすることを約束したうえで、日本政府に対して、自国企業がベトナムに積極的に進出するよう促してほしいと要請した。

菅首相は、アジア各国の歴訪のなかで、まずベトナムを訪問したことについて、「日本がベトナムとの関係性を重用していることの現れだ」と強調。ベトナムの近年の社会経済的な成長とともに、新型コロナウイルスの封じ込めを実現した政権の成功を称えた。また、今年、ベトナムが東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国と、国連安全保障理事会非常任理事国を務めていることを高く評価した。

そのうえで、菅首相は今後もベトナムの社会経済の発展を支援すると約束。「ITなど、フック首相が提案した分野での日越協力を進め、ベトナムのサプライチェーンを多様化できるような施策を検討していく」と語った。

日本側は、新型コロナ対策でもベトナムと連携していく考えで、技術支援や医療物資の提供など、数十億円規模での支援を行う計画を明らかにした。二国間の人材面での交流や協力に関しても、これまでの成果を高く評価しており、今後も日本におけるベトナム人コミュニティの支援に尽力することを約束した。

会談で、両国首脳は、高官レベルの相互訪問と交流や、ベトナム共産党と自民党間、さらに両国政府間での対話を継続し改善し、二国間の政治的信頼を強化することで合意。日本とベトナム間の航空便運航再開で、優先的な旅客往来を実現させ、二国間のさまざまな協力をコロナ前に戻す意気込みを示した。

今後は、次の収穫期の農業協力に向けた中長期的なビジョンの提示や、ベトナムのロンガン(龍眼)と日本産のみかんなどの果物の貿易の拡大、幅広い職種で日本におけるベトナム人教育訓練を実現させるなどの対策加速の方針を示した。気候変動や自然災害支援、干ばつや塩害対策、環境保護施策、電子政府の確立などの主要なプロジェクトなども効率よく実現させていく考えだとした。

菅首相はベトナムについて、「日本の外交上、アジア域内でももっとも重要な国の一つ」であると語り、今年11月にベトナムで開かれるASEANサミットとその関連会議が成功するよう、日本側が積極的に支援すると約束した。

アセアンや日メコン会議、国連などの国際機関や国際会議で親密な関係を維持し、環太平洋パートナーシップに関する先進的かつ包括的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)などのような経済的枠組みをより堅固なものとしていくこととし、両国首脳は、ベトナムと日本の関係をさらに強化し、幅広い分野での協力を誓った。

会談後、各省庁、関係当局、自治体や企業との間で、日越両者は計40億ドルにのぼる経済連携策に関する12の書類に署名した。