アフリカのフランス語圏諸国に新市場開拓の可能性 進出や連携に期待感

アフリカでフランス語を公用語とする国々が、近年、アフリカの新たな経済発展の中心地となっている。これらフランス語圏諸国は、新型コロナウイルスの感染収束後、ベトナム企業にとって進出の可能性を秘めた新たな市場として有望視されている。

フランス語が公用語に採用されるなどしている、いわゆる“フランス語圏”の国々はアフリカに32カ国あり、人口は合計で約5億7000万人に達する。この地域へのベトナムの主な輸出品はコメで、ベトナムのコメ輸出の21%が同地域向けだ。また、携帯電話やコンピューターの完成品や部品類、さまざまな電子機器などの輸出も盛んだ。

先日、ベトナムとアフリカのフランス語圏諸国との間での経済や貿易の協力拡大の可能性や展望を話し合うオンラインセミナーが開かれた。商工省と、フランス語圏の国々が加盟する「フランコフォニー国際機関(OIF)」が共催したこのセミナーでは、アフリカ各国の企業経営者ら数百人が参加した。主催者らによると、ベトナムと、アフリカのフランス語圏諸国32カ国との間の貿易総額は、2015年の27億ドルから2019年の45億ドルへと、大きく拡大したという。

ベトナム商工省アジアアフリカ市場局のレ・ホアン・オアイン局長は、「現在は、新型コロナウイルス感染の拡大で影響を被っているものの、疫病が収束すれば、両者の間の長く続く友好関係と、外交上の結びつきなどから、ベトナムとアフリカ大陸との貿易はさらに大きく成長する余地がある」と話す。

その背景にあるのは、アフリカのフランス語圏諸国が切望する経済の発展だ。これらの地域では急激に都市化が進んでおり、経済の担い手となる高所得者層と中間所得層が増加する傾向にあるからだ。

ベトナムとこれらのフランス語圏の国々は、輸出入の主要製品がお互い補完しあっているというメリットもある。例えば、アフリカのフランス語圏諸国はベトナムの製造業が原材料とする、カシューナッツや綿花、銅や木材などを、ベトナムへと輸出している重要な原材料供給源なのだ。これらの原材料の輸入は、ベトナムがアフリカのフランス語圏諸国からの輸入する品目のうち80~90%を占めるという。ベトナムはいまや、カシューナッツ加工品と繊維類の輸出で世界のトップ5カ国に入るとされているが、これらの原材料の多くは、実はアフリカから輸入されているものなのだ。

◇協力の機会に期待
石油やガスの発見や発掘、鉱物の採掘、化学物質や化学肥料の生産、布と衣類製造、皮革製品と靴の製造、木製品、食品や飲料などの生産分野などでは、アフリカ諸国とベトナムが協力したり、共同でベンチャー企業を設立したりするチャンスもあると期待される。アフリカ大陸自由貿易協定(AfCFTA)によって、アフリカはベトナムにとって最も多くの国が参加する地域となり、3兆4000億ドル規模の市場に投資する機会が提供されることになる。

ハノイ市に設置されているフランコフォニー国際機関・アジア太平洋地域事務所のチェコウ・ウスマン代表は「アフリカにおいて、ベトナムは東南アジアとのビジネスにおける『玄関口』ととらえられている。逆にアフリカの国々も、ベトナムを含むアジアの国々にとって魅力ある取引先や投資先になれるはずだ」という。ウスマン代表はまた、ベトナムとアフリカがともに若者の人口比率が高いこと、天然資源が豊富なこと、文化が多様であることなどの共通点を挙げ、「両者は経済的にも、補完し合える重要な存在だ」と指摘する。

一方、商工省アジアアフリカ市場局のレ・ホアン・オアイン局長も、「商工省は、ベトナムとアフリカのフランス語圏諸国との間で、貿易の障壁となることを取り除くことに今後、全力を注ぐ」と期待感を語った。アフリカでの市場調査や、将来的なパートナートなり得るアフリカの企業との直接的な接点を探っていく支援を積極的に行っていく考えだ。

特に今は、新型コロナの影響で、特定の少数の国に重く経済を依存することが懸念され、幅広く、安定した持続可能なサプライチェーンの構築が重要視されている。このため、ベトナムはアフリカのフランス語圏諸国とともに、コメや小麦、カシューナッツ、木材、繊維と衣料品、皮革製品や靴、健康関連商品などに焦点を当て、堅固なサプライチェーンの構築を目指し、「アフリカ諸国とベトナムの両方にとっての利益を追求していく」(オアイン局長)方針だ。