海外で存在感増すベトナム商品

新型コロナ禍にあっても、関係当局によって地道に継続されてきた貿易促進活動が実りつつある。外国のスーパーマーケットの商品棚に並ぶベトナム産品が増え、さらに入手しやすくなった。例えば、日本の小売り大手、イオングループは、子会社のイオンベトナムを通じて昨年、ライチの日本への輸出を始めた。滑り出しは好調で、今年はさらに取り扱い店舗が広がったという。

◇ライチが紡ぐ縁
今年の6月4~6日、鹿児島県のイオンモール鹿児島の商品棚に初めて、ベトナム産ライチが並んだ。在日本ベトナム貿易事務所によると、ベトナムから輸出したライチは、高品質をうたう自社ブランドの「イオントップバリュ」の商品の一つに選ばれているという。昨年の取扱店は限られていたが、日本人消費者らにもっとベトナム産の地ライチを知ってもらおうと、今年は全国のイオン系列店300店以上で販売され、「ベトナムフェア」と名付けた催事として他のベトナム産品も紹介された。

一方、シンガポールの流通大手、フェアプライス社は、ハイズオン省タインハー産の「ウ・ホン種」のライチに注目した。ベトナムのライチが同社のスーパーの陳列棚に登場したのは、今年の6月初旬。最初の1週間は、10万5000ドンの特別価格で、その後は1キロ12万ドンの通常価格にされたが、販売は好調だった。昨年は、同社の超大型店と主要店だけでの取り扱いだったが、今年は230店全店で販売された。

ハノイ市投資・商業・観光促進センター(HPA)のグエン・チー・マイ・アイン副所長は、2年前、パリに複数の店舗を有するベトナム系スーパー、タインビン・ジューヌにベトナムの商品を仕入れてもらおうと、関係強化を始めたという。その後の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、直接的な接触は停止せざるを得なくなったが、フランスのベトナム貿易事務所などを通じて、タインビン・ジューヌとやり取りを続け、オンラインでのベトナム物産のPR企画実現へとこぎつけたという。

◇海外向け販売網の開拓
このように、新型コロナウイルスによって物理的な人の動きが制限された時期も、世界のスーパーの商品棚にベトナム産品を並べるための努力は停滞することはなかった。ハノイ市人民委員会は知恵をしぼり、海外在住のベトナム人の協力を得て、ベトナム産品を世界各地でPRする「116/KH-UBND計画」の実施に踏み切った。

計画は、ベトナム製品を海外に在住するベトナム人が経営する店舗などに扱ってもらうために、積極的に海外向けに情報を発信し、企業とのつながりを強化するというもの。海外で取り扱ってもらいやすくなるよう、商品を輸出するための条件を整え、品質を向上させ、食品の場合は衛生面や安全性を確保するなど、輸出する側も努力を積み重ねるという内容だ。

ハノイ市投資・商業・観光促進センターも、海外の販売網にベトナム産品を取り扱ってもらえるよう、販売促進活動の展開に意欲を見せている。新型コロナの感染が制御されるようになれば、イオンモール・ロンビエンとイオンモール・ハドンの2カ所の大型商業施設で、ベトナム産の商品や特産品をPRするための展示会を実施する予定で準備を進めている。出店するブースの2割では、ハノイ市内にある伝統工芸村や手工芸村の商品を取り扱う予定だ。その他、ベトナム版一村一品運動から、200~300点の商品を選び出し、イオンのバイヤーに見てもらうという。

ハノイ市人民委員会は2017年、ベトナムからの食品などの輸入強化を目指していたイオングループと、商品輸出の20年間継続協力協定を結んだ。過去5年間で、イオンを通じて日本へと輸出されたベトナム産品の総額は、120%増となり、金額では年間約14億ドルに達するまでになった。このように海外の小売企業の流通ネットワークを通じたベトナム製品の輸出拡大は、世界中の何百万人もの消費によい製品の商品を届けるための、効果的で持続可能な販売網として有望視されており、新たな販売網の開拓が進められている。