国境交易を「公式貿易」に完全移行へ 中国側が規制強化

新型コロナウイルスの感染拡大などを受けて、中国はこのほど、北部国境地帯の国境検問所を介して、ベトナムから中国に輸入される農産物に関して、規制や手続きを厳格化した。これまでは正式な検疫を経ず非公式な貿易手法で商品が中国側に運ばれることも多かったが、すべて正式手順を踏んだ公式貿易へと移行させることで、中国に輸入される商品の価値を維持するねらいがある。

◇規制の強化へ
植物や動物の輸出入検疫の厳格化に加え、中国側は、国境検問所を通過しての貿易活動そのものにも厳しい規制を課し、管理を徹底する方針に転換した。新型コロナウイルスの感染拡大を抑えることが目的だというが、このことで、ベトナムからの輸出、特に農作物の輸出が大きな課題に直面している。

中国当局は先月、北部ランソン省のタンタイン国境検問所における輸出入手続きの変更や厳格化を決定し、商工省傘下の外国貿易局を通じて通告した。

8月18日発効された今回の変更の中でも大きな影響を与えるのが、ベトナム側の輸出業者や運転手の中国への入国禁止措置だ。この措置によって、ベトナム側の運転手は国境検問所までしか運転できなくなり、そこで中国人運転手に配送車を託し、目的地まで輸送を代行してもらわなければならなくなった。中国人運転手らは、商品を配送後、配送トラックを元の国境検問所まで運転して帰るというシステムだという。

今回の決定は、ベトナム側のトラック運転手のひとりが新型コロナウイルスに感染していたことが発端となったもので、中国側は感染者が見つかった後、一時はタンタイン国境検問所を通じた交易を全面停止し、多くの農作物トラックが国境に停滞する事態となった。強化された規制管理は今後、ベトナム側の輸出経費を大きく引き上げると予想され、ベトナム輸出業者や物流企業などにも影響が及ぶと懸念される。

中国が突然、輸出に厳しい規制を課したり、ルールを変更したりしたのはこの一例だけではない。先日は、タイ産の果物、竜眼(リュウガン)が、「安全ではないと判明した」との理由で、突然、中国への輸出を禁じられた。また、在ベトナム中国大使館で商業経済を担当するフー・スオジン参事官はこのほど、来年1月1日以降、ベトナム産の農産物や魚介類の中国への輸出に対して、中国側が新たな規制を適用するとの方針を示したばかりだ。

◇落胆する国境地帯の市場
新型コロナウイルスの感染を管理し、抑制する策が増やされたことも、検問所での貿易活動を停滞させている。そこで、農業農村開発省はベトナムの農家や輸出業者に対して、検疫や国境の通過がスムーズに行われるよう、中国側が課す食品安全やなどの新たな規制に注意を払い、厳守するよう訴えている。

ベトナム商工省傘下の貿易局と、各地域の貿易担当部局は、タンタイン国境検問所を経由して中国へと輸入される農作物に関して、中国側が発出する最新の規制情報に注意するよう促している。また、貿易関連企業に対し、ランソン省ドンダン市と中国江西省の萍郷(へいきょう)市を結ぶ鉄道や、クアンニン省にあるその他の国境検問所など、他のルートを通じて中国に輸出することが可能だと発信を続けている。

これまで中越国境地帯では、交易市場などで人と人が対面交流するかたちで、非公式の貿易が行われてきた。だが、中国側は今後、手続きに従って通関を経た正式な輸出商品の流通展開を優先していくとしている。そのため、ベトナム側の企業や物流団体などに対し、中国への商品輸出を今後はすべて公式ルートで展開するよう促している。

さらに、検問通過を加速させるために、ベトナムの農作物輸出業者に対して、中国側の求める安全基準や品質の基準などを満たす商品をそろえ、商品分類や梱包規制を遵守し、原産地証明や生産の時期、場所などを示すバーコード掲示などの基準を満たすよう、努力を要請している。

ベトナムから中国への主要な農産物には、ドラゴンフルーツ、スイカ、ライチ―、竜眼、バナナ、マンゴー、ジャックフルーツ、ランブータン、マンゴスチンなどが含まれる。農業農村開発省は新型コロナウイルスの感染が落ち着き次第、これらに加えて、さらに8種類の農産物を輸出対象リストに追加し、中国側との輸出議定書に署名する方針だという。