オランダがメコンデルタの農業支援 環境にやさしい柑橘類栽培など実現

オランダ政府はこの数年間にわたり、メコンデルタ地域の一帯で、農業栽培技術や灌漑用水の管理、生産物の物流など、農業分野に焦点を当てた協力プログラムの実施に取り組んでいる。行政と民間が連携した官民連携モデルは、柑橘類の持続可能な栽培の実現など、さまざまなビジネスチャンスの実現にも結び付いているという。

◇計画から実行への転換期
メコンデルタにおけるオランダとベトナムの二国間協力とパートナーシップは、この地域の特性や強みであり、オランダの主産業のひとつでもある農業に焦点を当ててきたのが特徴だ。現在は6件のプロジェクトが進行中だが、なかでも輝かしい成果を収めているのが、オランダのフルーツリパブリック社が、カントー大学と柑橘農家が集まるロンアン省ベンリュック地区と協力して進めている「持続可能な柑橘類栽培を目指す5カ年計画」だ。

同プロジェクトの総投資額は400万ドルで、オランダ政府とオランダの私企業が半分ずつ負担している。メコンデルタにおいて、持続可能なかたちで、より効率や品質のよい柑橘類の栽培を実現することを目指しており、環境にやさしく、持続可能な果樹栽培のバリューチェーンを構築することで、小規模な柑橘果樹園を営んでいる一帯の約15万軒の農家の収入も引き上げられるとしている。柑橘類栽培農家は、栽培委託契約をオランダ企業と結ぶことで、肥料の使用や疫病に強い苗木の選定など栽培に関する技術指導を受けられるほか、資金的な援助も得られる。

現在進行中のオランダとメコンデルタの共同プロジェクトには、ほかにも果物の品質向上、苗専門の農家の育成、気候変動に柔軟に対応できる農作物のバリューチェーン構築―など、一定の社会的経済的利益が得られたプロジェクトもある。また、湿地や河川の多いメコンデルタで水面を有効活用できる大型水上農作物保管庫のシステム構築のほか、ハウザン省では農業廃棄物をエネルギー源として活用する技術の開発、カイメップ港では物流施設の建設計画などが近く実現する予定で、両国の協力は計画段階から実行への転換期を迎えている。

◇持続可能なビジネス基盤
在ベトナム・オランダ大使館のエルスベス・アッカーマン大使は、ベトナムとオランダとの間で約束されたメコンデルタ地域の発展計画の実施の加速に向けて、両国が実現させた持続可能なビジネスプラットフォームの存在が、大きな一歩になったという。

これらは「メコンデルタにおけるベトナム-オランダのビジネスプラットフォーム2021年行動計画」に基づく活動で、メコンデルタの企業とオランダの企業間の市場情報の交換、メコンデルタ地域への投資や事業開拓を前提とした調査の実施なども行われているという。

ベトナム商工会議所(VCCI)カントー支部のグエン・フォン・ラム支部長は、行動計画の実施が今後、メコンデルタとオランダの間の貿易や投資誘致を促進するきっかけになると期待。「ベトナムの経済発展を加速させる重要な推進力になる」と話す。

ビジネスプラットフォームには第三者として、野菜や果物、育苗などの農業分野と物流分野の企業で作るオランダの企業連盟も参加している。同連盟のウィレミエン・ヴァン=アセルト代表は、「オランダ側は、両国間の協力をさらに強化する措置を講じている」と説明する。例えば、メコンデルタ地域に興味を持ったオランダの企業が現地の情報を学べるウェブサイトの作成や、国際協力活動を通じてオランダの企業がメコンデルタ地域やベトナムについて知識を深めるための支援が実現しているという。また、オランダの関係省庁なども近い将来、ベトナムにおけるパートナーシップをさらに強化するねらいで、活動増強の検討を始めている。