北欧向けコーヒー輸出拡大へ 産地限定、オーガニックなどで高級品市場を開拓

北欧諸国は人口一人当たりのコーヒー消費量が世界でも最も多い地域だ。特徴的なコーヒー豆を求める市場であることから、焙煎前の豆やカフェイン除去をしていないコーヒーなどの未開拓分野でベトナム企業の進出の可能性が指摘されている。将来的には、産地限定の豆やオーガニック栽培製品などで新たなブランド創設につながる可能性も期待される。

◇機会と挑戦
北欧のコーヒー市場についてこのほど国際貿易センター(ITC)が、「現在はアラビカ種が中心である北欧諸国のコーヒー市場に、ベトナムが主に栽培するロブスタ種も参入の余地と可能性が多いにある」と、ベトナムにとって大いに期待できるレポートを発表した。また、「北欧圏の従来のコーヒー市場は飽和状態に近いといえるが、特徴的なコーヒーや、オーガニック製品、高級品の市場は成長しており、ベトナムコーヒーが市場に進出するチャンスは増えている」というのが、スウェーデンにあるベトナム貿易事務所の市場分析だ。

焙煎前の未加工の豆やカフェイン除去をしていないコーヒーなどは、ベトナム企業が手をつけていない分野で、進出の糸口となる可能性がある。また昨年8月に発効したEUベトナム自由貿易協定(EVFTA)でゼロ関税となるという絶好の機会でもあり、環境に配慮した方法で栽培されたいわゆる「グリーン・コーヒー」は、市場競争力を増している。

しかし、チャンスに恵まれた一方で、障壁もある。

世界第2位のコーヒー生産国であるベトナムを筆頭としたアジア産コーヒーといえばロブスタ種が主流で、ベトナム産コーヒーの95%を占める。これはスタンダードなコーヒーの大量生産に適した品種で、主にインスタントコーヒーの原材料に利用される。ネスレのような大手企業は、これを大量購入し、ベトナムに製造加工工場まで建設して、自社ブランドのインスタントコーヒーを生産している。一方で、北欧のコーヒー市場は嗜好性が高く、高い品質を求める傾向があり、これまではアラビカ種の輸入が主流であったため、従来の製品や手法のままでは、ベトナムのコーヒーメーカーが市場を開拓できる余地は限定的になってしまうだろう。

◇課題解決で将来性を開拓

在スウェーデン・ベトナム貿易事務所では、ベトナムの北欧向けのコーヒー輸出を支援しようと、さまざまな情報やアドバイスを発信している。

その中でも重要なのが、北欧に限らずEU全体が課すさまざまな市場の規制についての理解だ。「北欧市場への進出を目指すなら、特に厳しく遵守する必要がある」と同事務所は指摘する。

これらの情報は「Trade Help Desk」などEUが開設しているサイトなどで見ることができるので、コーヒー輸出は手順をしっかり理解する必要がある。輸出した商品がベトナムに送り返されたり、欧州市場への輸出を禁じられたりすることのないよう、メーカーは輸出する前に、禁止成分が商品に含まれていないことなどを、ビナコントロールやカフェコントロールなどの認定機関で分析、証明してもらわなければならない。

「原材料を調達先への指示徹底や、コーヒーの育成や乾燥、加工、保存の手法を見直すことで、最終製品から規定量を超える禁止物質が検出されるリスクを減らすことができる。輸出業者には、サプライチェーンのあらゆる段階で、製品のコントロール徹底が求められる」(同事務所)。

加えて、高収入である北欧では、他の国々と比べてもコーヒー文化が成熟しており、コーヒーの中でも高級品消費が伸びていることから、進出を考えるベトナムのコーヒーメーカーには、特色のある品種や商標保護品種、産地限定品種の栽培、オーガニック製品などの開発検討を勧めている。

また、世界的なコーヒー見本市に出展して、品質や量、認証などの面で、自社の経営方針や輸出能力に合った買い手を見つけることも足がかりとなる。 北欧地域でいえば、トロンハイムコーヒーフェスティバル(ノルウェー)、デンマークコーヒーフェスティバル(デンマーク)、ストックホルムコーヒーフェスティバル(スウェーデン)などが開催されており、ベトナムのコーヒー輸出業者がヨーロッパのバイヤーと商談できる絶好の機会提供となりそうだ。