フック国家主席が米国訪問、国連総会で演説 民間企業と面談も

ベトナムのグエン・スアン・フック国家主席は高官らとともに先月末、米国を公式訪問した。9月22日には、ニューヨークで開かれた国連総会第76回国連総会(UNGA76)に出席し、演説を行った。近年、ベトナムは自立と平和、協力と発展を国の柱として掲げ、対外関係の多様化を外国政策として追及してきたが、フック国家主席の米国訪問と国連演説は、その外交方針を明確に示すものとなった。

◇国際協力を積極的に促進
演説のなかで、フック国家主席は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大、感染収束後の経済回復、気候変動の影響がもたらす悲劇、そして世界各国や地域の平和と安定の4つの項目を、「人類史上もっとも重要な課題」として、その解決に向けた国際協力の重要性を語った。演説は、「国際連合の活動に対して実践的で、責任ある効果的な貢献を行っており、ダイナミックかつ革新的で、繁栄や平和を愛する国」というベトナム像を、強いメッセージとして発信したとして、各国から称賛を得た。

国連での演説と並行して、フック国家主席には各国首脳や国際機関の高官らと面談し、国際関係の改善や深化を実現させる手法などを話し合った。また、新型コロナウイルスのワクチン接種加速に向けた支援の要請も行った。

EUのシャルル・ミシェル欧州理事会議長との会談では、フック国家主席は、「欧州との関係をより強化したい」というベトナムの思いを強調。両者は高官レベルでの交流を近く再開させることで合意し、現状での協力体制や意見交換の枠組みを効率化して、欧州とベトナムの関係をさらに進展させる手法を探ることで一致した。また、フック国家主席は、EU加盟各国の議会に対して、EU・ベトナム投資保護協定(EVIPA)の早期批准を実現するよう働きかけた。

◇民間企業同士の協力も強化
さらに、民間経済の交流や投資の誘致を視野に、フック国家主席は、トップセールスも展開。米国の電力大手AESや科学機器のサーモフィッシャー、ノースウェスタン製薬、液化天然ガスのエクセラレート・エネルギー、電気機器の多国籍企業、ゼネラル・エレクトリックなど、複数の米国の民間企業や多国籍企業の代表者らと面談し、特に戦略的分野であるハイテク産業、インフラ整備、金融などの分野を中心に、ベトナムへの民間投資の継続と増強を希望した。また、ベトナムがアジア地域、さらには世界のサプライチェーンに参入するための後押しを求めた。

国家主席の米国訪問に合わせて、国営ベトナム石油ガスグループ傘下のペトロベトナムガス(PVガス)社は、米国のAESとの間で、ソンミー港(ビントゥアン省)での液化ガス保管施設の設置・運営に関する事業提携を調印した=写真㊤。事業の実現によって、ベトナム南部の主要な経済特区をはじめ、全土で高まっている液化ガス需要に見合う供給が確保されることになるという。

随行したグエン・ホン・ディエン商工相も、AESの取締役会とワーキングセッションを開催。商工省をはじめベトナム政府が、幅広い分野にわたる協力の実態と効果をより強固にするために、「米国側とともに努力を重ねる」との考えを示した。ディエン商工相はまた、エネルギー、航空事業、金融、農業、保健衛生と教育の充実などを、今後特に重要視する主要分野として挙げ、柱となる経済貿易の関係強化とともに、「米国とベトナムが強力分野をさらに広められるよう、基礎となる土台を固めたい」とした。