チン首相、COP26 出席で英仏歴訪 エアバス社と宇宙観測の事業提携実現など経済面で成果 

ベトナムのファム・ミン・チン首相は、先月31日から11月5日にかけて、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)への出席に伴い、イギリスとフランスを歴訪した。チン首相はCOP26の会議に出席したほか、特に両国との経済協力関係の強化に向けて精力的に活動し、民間企業との事業提携などで成果をおさめた。

なかでも注目を集めたのが、フランスとベトナム両国の、宇宙開発分野における協力強化だ。ベトナム2機目となる地球観測衛星「VNREDSat-2号」の打ち上げ計画において、主体となるベトナム科学技術アカデミー(VAST)が、国の「2020~2030年 宇宙科学技術開発応用戦略」を実現し、地球観測システム確立に向けた課題を解決するために、フランスのエアバス社との事業提携を実現させた。

提携書の調印式は3日、ベトナムのチン首相とフランスのジャン・カステックス首相の立ち合いのもと行われた。ベトナム科学技術アカデミーとフランス国立宇宙研究センター(CNES)、エアバス社の三者が、ベトナムの地球観測衛星に関する協力実施で合意し署名した=写真㊤。

ベトナム初の地球観測衛星だった「VNREDSat-1」もエアバス社の協力を得て、2013年に打ち上げが成功した。現在も同機はまだ運用されているが、VASTではこれに続く2号機の打ち上げ実現に向けて研究開発を進めていた。計画の実現によって、ベトナムの宇宙関連技術は格段に向上することになる。また、新たな衛星の打ち上げによってベトナムのニーズにあった情報が得られるようになり、経済発展とともに、社会に役立つ知識の深化の面でも大きく貢献すると期待されている。

2号機の実現計画のなかで、エアバス社はVASTに協力し、技術移転を行う。同時に、今後のベトナムの地球観測システムに必要な課題解決の方法を協力して見極めていくという。

一方で、VASTとフランス国立宇宙研究センターは、気候観測に関連した協力体制の構築など、この計画実施によってどのような分野でメリットが得られるかを探る考えだ。稲作などの農業生産の管理や大規模な自然災害などの監視を行う「VietSCOプログラム」の枠組における気象関連分野での協力、専門家の育成や教育などの充実を目指す。

◇民間同士の提携促進 ビジネスフォーラムにも参加 
チン首相は、ベトナムとフランス双方の民間企業などが参加するビジネスフォーラムにも出席した。フォーラムでは、ベトナムの各省庁や組織、民間企業などとフランスやヨーロッパ諸国の組織・企業の間で29の事業協力協定が締結されるなど、大きな成果を得た。

フォーラムでスピーチに立ったチン首相は、フランス企業に対し、「ベトナムのパートナー企業との関係深化に向けて学び、議論を続けてほしい」と要請。投資だけにとどまらず、政策立案や組織運営、行政改革、自然環境に優しい施策や技術などの実現、人材育成や新たな行政手法の確立などにおいても、多様なかたちでの協力と支援を求めた。

チン首相は、フランスとベトナム間の協力が、投資や貿易にはじまり、文化や教育に至るまで、幅広い分野にわたって広がり、両国の発展に貢献していることを強調し、「ベトナムの外交方針に沿って、政治的相互信頼関係が強化されたことで、両国の関係はさらに緊密になるだろう」との展望を語った。ベトナムに投資する外国企業にとって懸念材料であったインフラ整備や人材育成などの課題解決についても、「集中的に課題に取り組んでいる」とした。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大についても触れ、ベトナムが効果的な予防措置と感染対策によって疫病を抑制した経緯を説明。経済や社会の回復と発展を実現するために、ベトナムが安全で柔軟かつ効果的な対応を展開する新たな段階へと移行していることを説明したうえで、「当初の成果は好ましいものだ」とアピールした。