ベトナム、国際線定期便の段階的な運航再開へ 景気回復効果に期待

ベトナム運輸省は来年1月、海外15の国と地域との間で、国際線定期便運航を再開することを決定した。3期に分けて段階的に対象となる人や国を増やし、7月の全面的運航再開を目指す。同省傘下のベトナム民間航空局(CAAV)によると、今年1~9月のベトナム着国際線乗客者数は15万人にとどまったが、この措置によって50万人程度にまで回復すると期待している。

◇安全かつ柔軟に、現状に適して受け入れ
昨年の年頭以降、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、大きくベトナムの観光業に影響した。海外からの年間入国者数は、帰国者も含めて380万人にとどまり、2019年比マイナス80%と激減した。海外からの観光客の不在によって、全国の宿泊施設、飲食店などサービス業、交通運輸分野も、経済復興が果たせずにいる。

国際線定期便の早期再開は、ベトナム観光業の再興にとって不可欠だが、現在の感染抑制の成否と、今後の感染拡大の抑え込みに大きく左右される。それでも、ベトナム航空開発計画局のグエン・グアン・チュン局長は、「ベトナムのすべての航空会社が、国際便の定期運航再開を待ち望んでいた」と話す。チュン局長は「これ以上再開が遅れれば、ベトナムの国際的競争力は失われ、観光業界の復興はさらに停滞するだろう」と警告している。

ベトナム観光総局のグエン・レ・フック副総局長も、「観光業界は、国内での観光が安全なものになるよう、さまざまな関係機関と連携し努力を重ねており、海外からの観光客を受け入れる準備も整っている」と話す。

ベトナムは東南アジアで新型コロナワクチンの接種率が最も高い国のひとつであり、1日当たり最大200万件と急ピッチで接種が進められている。また政府が新型コロナ感染をめぐる政策をこれまでの「ゼロ・コロナ」から、感染状況に応じて安全な対応を行う「ニュー・ノーマル(新しい常態)」へと転換したことも追い風となり、国際線運航の再開が適切だと判断された。

◇段階追って国際線運航を再開
具体的には、ベトナム運輸省は、政府に対して、3段階に分けた定期便再開を提案している。来年第1四半期が対象となる第1フェーズでは、中国、香港、日本、韓国、台湾、タイ、シンガポール、マレーシア、ラオス、カンボジア、フランス、ドイツ、ロシア、英国とオーストラリアの15の国と地域からベトナムを訪れる観光客らが対象となる。これまで同様、入国が許可されるのはワクチン接種済みの人または回復した感染者とし、隔離施設での隔離が義務付けられる。
来年4~6月の第2フェーズでは、新型コロナウイルスのワクチン2回接種を国際的に証明する「ワクチンパスポート」保持者に限定して、隔離を免除する考えだ。

第3フェーズは、その時点での世界的な感染状況とワクチン接種の進展状況などにもよるが、国際線定期便の全面的な運航が再開される予定で、来年7月の実現を目指している。運航の便数などは、各航空会社が決定するという。

ベトナム民間航空局(CAAV)のボー・フイ・クオン副局長は、「国際線定期便の運航再開は、海外各国の経験に基づくもので、非常に現実的だ」と評価する。さらにクオン副局長は、ベトナム在住の外国人らが母国に戻るための帰国便について、「海外からの信頼に応えるためにも、事業を継続すべきだ」と民間航空会社各社に呼びかけている。

ベトナム外務省のファム・トゥ・ハン報道官は、ベトナム当局が、すべての国際線定期便運航を通常通りに戻すために、「時期を見て、適切であれば、ベトナムへの入国を許可する外国人対象者の緩和や拡大を検討する」という。その前提として、外務省は、海外80カ国と新型コロナの「ワクチンパスポート」についても、相互承認の手続き加速を話し合っているという。