東アジア地域包括的経済連携協定、来年発効へ 広域貿易圏の実現に、ベトナム企業も準備を

東南アジア諸国連合(ASEAN)主導で広域的な経済圏構築を目指す「東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)」が来年1月1日、発効する。ASEAN加盟の6カ国と中国、日本がすでに批准書をASEAN事務局に寄託していたが、11月初旬、オーストラリアとニュージーランドが相次いで批准したことで、発効要件が満たされた。

◇安定と持続が見込める輸出市場
協定は昨年11月15日、ベトナムが議長国を務めた第37回ASEAN首脳会議で、ASEAN加盟の10カ国と、非加盟のパートナー国として日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国が署名していた。 これまでに、ベトナムをはじめシンガポール、ブルネイ、カンボジア、ラオス、タイと中国、日本で批准が完了していた。

15カ国すべてが加わったあかつきには、RCEPは世界の人口の約30%に当たる22億人を抱え、世界の国内総生産(GDP)は約30%に相当する26兆2000億ドル規模と、世界最大規模の広域経済圏が実現することになる。

ベトナム商工省によると、RCEPの実現は、ASEANがこれまで調印した他の複数の貿易協定を多角化し、これらが定める約束や規制を同調させることで経済的な利点が実現する。また、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大後の経済の回復や、地域的な原材料供給網の強化などにもつながると期待されている。

このほどベトナムの民間企業を対象に開かれたオンラインセミナー、「RCEPについて企業が知っておくべきこと」で、ベトナム商工会議所(VCCI)傘下の世界貿易機構・国際貿易センターは、RCEPがベトナムの総輸入額の約70%に相当する主要輸入市場のほとんどをカバーすることになり、ベトナムへの直接外国投資(FDI)の主要国も、RCEP加盟国である、などベトナムが置かれた現状を説明。すでにベトナムの海外貿易の約50~55%がRCEP域内で行われているが、協定の発効によって「域内の製造業とサプライチェーンの成長がさらに後押しされることになる」と、同センターのグエン・ティ・トゥ・チャン所長が期待を語った。

RCEPの発効によって各国は、より多くの投資を海外から誘致することができ、新型コロナの感染拡大が域内経済に与えた影響を軽減できると予想されている。また、ASEAN諸国に、とりわけベトナムにとっては、安定した長期的な輸出市場の創出につながり、政府が目指す輸出志向の生産政策を実現する大きな手助けになると期待される。

◇徹底した準備が必要
協定は、加盟各国間の関税障壁を排除し、関税以外の課題も解決していくことで、さまざまな商品がより自由に取引され、域内に流通することを目指す。だが、加盟各国は経済発展の度合いもさまざまで、関税基準も多様だ。そのため、各国の企業は今後、複雑な対応に直面する場合もあると予想される。2022年1月1日の発効をもって加盟各国間のさまざまな関税措置が撤廃されるが、廃止する関税の数や内容は、国ごとに違う。

原産地表示に関しては、RCEP加盟各国は共通の規範の採用などで意見が一致しているが、関税設定は国ごとに異なり、一部の分野の製品においては、新たに原産地証明の取得義務が追加されるものも出てくる。

非関税措置、輸入規制、輸出禁止、輸出入に関する特殊な検査手続きなどは、RCEPの発効によって各国で統一され、より手続きなどが簡単になる見込みだ。また、知的財産権に関する規制は、他の自由貿易協定(FTA)と同等か準じたかたちになる。

中央経済管理研究所(CIEM)のチャン・ティ・ホン・ミン所長は、RCEPについて、すばらしいチャンスになると称賛する一方で、企業が協定から利益を享受するためには、徹底した準備が必要だと指摘する。「この貿易協定が求める内容をしっかりと理解し、それに適合するビジネスプランを構築すべきだ」と、ミン所長は民間企業に呼び掛けている。