新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、ユネスコの世界自然遺産である人気観光地、ハロン湾(クアンニン省)も、昨年、売上高が過去20年で最低になるなど、観光業は大打撃を受けた。だが、ベトナム政府が1日から米国や日本などとの航空便商業運行を再開、クアンニン省も今月上旬からようやく外国人観光客受け入れを再開する方針で、国際観光の本格再開の兆しが見え始めた。

何億年も前の地質変動が、青い水面から大小さまざまな岩の島々が数千も立ち上がる独特の景観を作り上げたこの世界遺産は、世界の観光客を魅了しており、過去10年間で数百万人が訪れた。ハロン湾は、国内外の観光客にとって見逃すことのできないベトナムの観光経験の代名詞となっている。

その壮大な景色は、英国の旅行ガイド出版社「ラフガイド」の「世界地質学的驚異トップ20」、米国のオンラインニュースサイト「バズフィード」の投票による「必見の観光名所ベスト15」、観光PRサイトTouropiaの「2017年版・世界自然の驚異ベスト10」などに選出されている。2020年にはインサイダー誌の「世界自然の驚異トップ50」に名前を連ねたことからも、ハロン湾に向けられる世界の人々の注目度が伝わる。

ハロン湾は、ハロン市とクアンニン省の社会経済の発展にも大きく貢献している。ハロン湾の観光関連収益はこれまで毎年右肩上がりで成長してきており、2012~2021年の10年間の収益は、2002~2011年の10倍に当たる5兆8700億ドンに達している。

観光客数でみると、2012~2021年の10年間の観光客は延べ2720万人を超え、前の10年と比べて145%の成長となった。このうち約980万人が国内からの観光客、約1740万人が世界各国からの外国人観光客で、外国人観光客に限って言えば、この10年間の成長は196%増で、新型コロナウイルスの世界的感染が起こった2020年年初前ごろには、ハロン湾への外国人観光客は全観光客の3分の2を占めていた。

観光が低迷するなかでもハロン湾は、現代の最先端の機器や技術を用いて、一流の専門家や科学者のほか、国際機関の支援や協力も得て、独特の景観や自然環境の保護活動が展開され、自然環境の維持と観光の両立に向けた動きは停滞していない。ベトナム国内の観光客に限られてはいるが、観光も再開され、受け入れる観光客をワクチン接種者や家族単位などの小規模のグループ観光に絞り、訪れることのできる場所や滞在できるビーチなどを限定して受け入れを始めている。

昨年中旬から年末にかけては、クアンニン省がハロン湾やイエンバイ遺跡群、クアンニン博物館の訪問に必要なチケットを無料化。バンドン空港からハロン湾観光の拠点となるドクド、ウオンビ市までの往復バス運賃を割り引くなどして観光促進を始めている。

今年1月1日からは、ベトナム政府が米国やシンガポール、東京、ソウルなどとの間で、航空便の商業運行を再開した。新型コロナの変異株、オミクロンの世界的流行によって予断を許さない状況ではあるが、地元の観光事業者や旅行関係企業などは、できるだけ早い操業の本格再開に向けて、必要な準備を行い、安心安全な観光プログラムの開発に余念がない。