昨年発効のUKVFTA、関税撤廃、両国企業に恩恵

2021年5月1日に発効された英国ベトナム自由貿易協定(UKVFTA)は、完全に実施されると、両国間の関税は事実上すべて撤廃される。

写真㊤=ベトナム産エビのほとんどの種類で、英国への輸入税が撤廃されている

◇関税優遇措置
駐ベトナム英国大使館は、今回の協定により、ベトナムは1億5100万ドル(約204億円)の関税を削減し、英国は3600万ドル(約49億円)を削減できると予測する。協定は新型コロナウイルスの感染拡大のさなかに発効したが、協定初年度の二国間貿易額は66億ドル(約8900億円)に達した。

実際に両国間の貿易では、全関税の65%がすでに撤廃されている。協定発効後の最初の6年間で、英国はベトナムの輸入品にかかる関税の99.2%を撤廃する。これは、EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)で取り決めた70.3%の関税撤廃を上回るものだ。ベトナムは48.5%の関税を撤廃することを約束しており、この割合はEVFTAによるほかのEU諸国と同様となる。

UKVFTAにおけるそのほかの関税優遇措置では、ほとんどの種類の生エビに対する英国への輸入税が10~20%からゼロになり、木材製品の税率も今後5年間でゼロにする。果物ではすべてのタリフラインのうち94%を撤廃する。英国との貿易協定では、公共調達の自由化などに関する両国のコミットメントを維持している。ベトナムは5年以内に、2店舗目以降の小売店に実施される経済的需要審査(ENT)の撤廃を約束している。

◇全体的な利益
UKVFTAは両国の各分野や企業に大きな恩恵をもたらしている。特に、教育分野では、ベトナムの親は多額の費用を払って子供に高い教育を受けさせたいと考えており、英国企業にとってはチャンスである。再生可能エネルギーは、その可能性と政府援助があるため有望な分野であり、海外投資家を引き寄せている。

また、都市化の進展に伴いインフラ整備が急速に進んでいることから、鉄道や航空分野も英国の投資家に大きな好機をもたらしている。加えて、中産階級の増加や高齢化により、質の高い医療への需要が急速に高まっており、民間サービスにもチャンスが広がっている。

ベトナムにとって2022年は、経済成長を促進し、パンデミック以前の水準にまで回復させるために、非常に重要な年だ。自由貿易協定は、国の経済成長とビジネスの発展において、ますます重要な役割を果たすことになるだろう。しかし一方で、高い海上輸送費や投入原価の高騰、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻など、克服すべき課題は山積している。

煩雑な行政手続き、税関などでの対応の遅れは、ベトナム企業が自由貿易協定を有効活用する妨げになっている。ただ政府も、ベトナムのビジネス・投資環境を改善し、その魅力を高めるために一層の努力を行っている。