ベトナムファッションが近年、世界の市場に強烈な印象を残している。豊かな才能に注目が集まることで、ベトナムのファッション業界を、世界が認知するようになった。これが、アパレル業界の発展にも大きく貢献する結果につながっているという。
◇世界的デザイナーの活躍
近年、国際的に有名なセレブたちが、レッドカーペットを歩くときなどに、ベトナムのブランドを選ぶことが増えた。ベトナムのファッション業界をけん引するデザイナーのひとり、レ・コン・チー氏のデザインする衣装は、ベトナムの芸能人だけではなく、ハリウッドスターにも人気を誇っている。2019年、チー氏は2つのブランドを立ち上げ、ニューヨーク・ファッション・ウィークで披露した。ブランド名は、それぞれ「スター街道」「しずくを受け止める」という意味のベトナム語にした。
彼の作品は世界的に有名なR&Bの歌姫、ビヨンセさんをはじめ、歌手のカミラ・カベロさん、女優のコビー・スマルダーズさんやラブリエル・ユニオンさんに愛顧されている。ミシェル・オバマ元大統領夫人も、コン・チーさんの大ファンであることで知られる。
カルフォルニア芸術大とサンフランシスコ芸術大を卒業したベトナム系アメリカ人のデザイナー、フォン・ミーさんもキャリアを着々と積み重ね、今や多くの大手衣料品メーカーと手を組んでいる。彼女の2020春夏コレクションの製作を手掛けるのは、もとは高級ブランド専用だったイタリアの2カ所の縫製所だが、今では彼女の作品の縫製に専念しているという。
ミーさんの作品はニューヨーク・ファッション・ウィーク2019やバンクーバー・ファッション・ウィーク2018、ドバイ・ファッション・ウィーク2017など世界的なファッションイベントでも、紹介された。また彼女のブライダル部門は昨年、ウェディングデザインを表彰するイギリスの「ブライドラックス・インダストリー賞」で、急成長を見せるブライダル衣装のブランドにも選ばれた。
昨年、英国ファッション評議会メンバー選出の栄誉を得たのが、デザイナーのチャン・フン氏だ。最新の2021春夏コレクションは、ロンドン・ファッション・ウィークで発表され、同イベントのウェブサイトでも一般公開された。リサイクル繊維や環境に優しい素材を使ったフン氏の作品は、「持続可能なファッション」という現代のトレンドも踏まえたものだ。
このほかにも、エイドリアン・アイン・トゥアンさん、ケリー・ブイさん、ホアン・ハイさん、トゥイ・グエンさんなど、世界市場を見据えて活動をするベトナム人デザイナーが増えている。ベトナム人ファッションデザイナーの作品が、有名ファッション誌で大きく特集されることも多い。
ASEANファッション評議会は、ファッションのブランド確立とビジネスとしての発展の両面からデザイナーを支援しようと、ASEAN事務局が設立した初のファッション評議会だ。同評議会のレ・ティ・クィン・チャン会長も、「ベトナムの多くのデザイナーによる作品が世界ブランドに名を連ねたことで、ファッションやアパレル業界そのものが、大きく躍進した」とベトナムファッションに注目している。
◇変革するアパレル業界
それでは、ベトナムのアパレル業界には今後、どのような未来が待ち受けているのだろうか。
ベトナム繊維アパレル協会(VITAS)のブー・ズック・ジアン会長によると、ベトナムの繊維・衣料品業界は今後、2030年までに、新たに30のブランドを世界市場へと輸出するようになるという。年間の売上高は、1000億ドルに達する見込みだ。
製造面では、工業化・現代化の世界的な流れに遅れをとらないよう、変革を続けている。また、新型コロナウイルスの感染拡大によって物理的に店舗訪問が制限されるなか、さまざまな技術応用がますます重要になってきている。
例えばオンライン・ショッピングの導入などが一例だが、購入客から製品の評価の声が直接得られることに加え、価格比較が容易にできるうえ、購入そのものもより手軽になるなど、利点が多い。
オンラインの衣料品販売サイトの展開を始めた、アパレル会社、ダナンセールのグエン・トゥイ・ニュ最高経営責任者(CEO)は、「情報技術の活用とオンライン店の開設のおかげで売り上げは安定し、新型コロナに起因するさまざまな困難を乗り越える大きな助けにもなっている」と話す。
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VNLオリジナル 2013年9月01日