海外在住のベトナム人コミュニティが、ベトナム経済にとって重要な役割を果たすようになっている。彼らがベトナム国内で展開する事業やプロジェクトは約3000件、登録資本金は40億ドルに達する。これらの経済活動が雇用を創出し、ベトナム経済の成長にも大きく貢献しているだけではなく、ベトナム製品やサービスを世界市場へと売り出す契機としても、期待感が高まっている。

◇莫大な経済資源
現在、海外在住のベトナム人は130の国と地域で計530万人にのぼる。「彼らはそれぞれの居住地で、政治経済から文化、社会など生活のあらゆる側面において、その土地に溶け込み、活躍している」と、外務省・海外在住ベトナム人国家委員会のルオン・タイン・ギー副委員長は話す。海外在住のベトナム人コミュニティは拡大を続けており、ベトナム本国の社会経済発展にもたらす貢献も小さくない。1990年以降、海外からベトナムへの送金は、実に1700億ドルに達する。

海外へ散ったベトナム人同胞らは、彼らのもつ専門知識や母国との結びつきという面でも貴重だ。毎年、500人ほどがベトナムへ帰国しており、政府や各省、地域などの組織のほか、研究機関、大学など様々な場所で実力を発揮している。

ホーチミン市人民委員会のレ・タイン・リエム副委員長は、今年は特に、海外在住のベトナム人コミュニティや企業から、ベトナムでの新型コロナウイルス制御に大きな協力が得られたという。「彼らはコロナ禍にあっても貿易の接点を維持ししてくれ、それがその後の経済回復のスピードを大きく速めてくれた」と話す。

コロナ禍にもかかわらず、今年の1~9月の海外からホーチミン市への送金は、40億ドルに達し、昨年同期と比べて2%増となった。今年1年間での海外からの送金総額は、55億ドル(前年比0.82%増)になる見込みだ。

◇海外同胞との連携を継続
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大によって、人や物の往来が制限され、各国の経済は大きな打撃を受けた。ベトナム韓国ビジネスマン投資協会(VKBIA)のチャン・ハイ・リン会長は、「ベトナムと韓国の間でも、貿易などでさまざまな課題が生まれた。私たちはその克服に全力を注いでいる」と語る。

その解決策の一つとして同協会はこのほど、在ベトナム韓国大使館やベトナム外務省と連携し、両国の経済交流プログラム「ミーティング・コリア2020」を企画した。韓国側からは大企業から中小企業にいたるまで1000社を超える企業が参加し、ベトナム各地域との交流を図った。

一方、海外在住ベトナム人国家委員会は、各省庁や国内企業、業界団体などと連携し、海外のベトナム人コミュニティ向けに「ベトナム製品購入運動」を発信=写真㊦=、ベトナム各地の高品質な商品紹介を企画している。さらに、ベトナムでの生産の拡大や生産性の向上などを測るため、海外在住のベトナム系の専門家や知識人、企業関係者らに対して、新技術の移植を働きかけているという。

ベトナムでは電子政府の確立やデジタル経済の発展、革新的な科学技術導入の促進、さまざまな技術共有プラットフォームや国家的なデータベースの構築、安全な情報技術環境の確立などに意欲的に取り組んでいる。だが、まだ課題が山積しており、新型コロナを乗り越え、これらの分野での海外在住ベトナム人の協力が、特に期待されているという。