材木や木工品の輸出が好調だ。ホーチミン市手工芸木材工業協会(Handicrafts and Wood Industry Association of HCM City、略称HAWA)のフュン・バン・ハン終身副会長は、「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」の批准以降、国際的なバイヤーからの注文が中国などから、ベトナムへとシフトしつつある」と語った。

写真㊤=ホーチミン市で開催された「2019年ベトナム国際家具装飾品フェア」。木製のいすやテーブルなど、さまざまな製品が展示された

好況を示す兆候として、多くの会員企業が数百万㌦規模の投資をして、生産設備の向上を図っているという。屋内外用の家具を輸出するスカンジア・パシフィックのグエン・チェン・チャン取締役は「輸出を取り巻く環境は、昨年より改善し、契約数は30%以上向上している」と話す。

ベトナム製の家具の輸出先はこれまで米国と欧州が中心だった。米国では輸入家具の需要が増加するなか、米中の貿易摩擦が勃発。バイヤーは、中国以外の供給先を探している。CPTPPやその他の貿易協定による恩恵にも期待が集まっているが、木工品の関税はもともと低く、現時点ではまだ大きな効果は現れていない。ビンズオン家具協会のディエン・クアン・ヒエップ会長は「注文は今年も来年も増えそうだが、米中貿易戦争やCPTPPが理由とは言えない。世界の材木加工産業はベトナムに進出する傾向にある」と話す。

木工業界は昨年大きく躍進。輸出高は、前年比16.8%増の94億㌦(約1兆300億円)を記録した。「現在の成長率に準じれば、今年の目標を110億㌦(約1兆2100億円)に設定したとしても達成は難しくない」と強気の構えだ 。

追い風は、ビジネスチャンスでもあり、それぞれの企業が生産設備を拡大するチャンスにもなりそうだ。業界全体の能力を向上させるには、政府による工業団地の開発が不可欠だ。工業団地に集まった企業が、それぞれ連係することで新たなサプライチェーンができれば、業界のさらなる強みにつながるからだ。

ベトナムには現在、4500の材木、木工企業があり、うち95%が民間企業だ。2018年、輸入向けの木工企業は前年より300社以上増加し、1800社を超えた。ベトナムの材木や木工品は世界の120カ国以上に輸出され、木工品では世界5位、東南アジアで1位の輸出国となっている。