世界的に次世代自動車の普及が進む中、商工省は、ベトナムが電気自動車や環境負荷の低い自動車の開発に乗り出し、適切なタイミングでインセンティブを提供しなければ、世界の流れに取り残されるリスクがあると警告している。

◇市場依然小さく
2ヶ月前、ヴィンファスト社の初代電気自動車は、発売から12時間で約4000台の注文を受け、ベトナムの電気自動車業界の可能性を示した。

商工省傘下のベトナム工業庁(VIA)によると、ベトナムの年間自動車販売台数は約30万台だが、電気自動車の輸入台数は、2020年は900台、21年第1四半期は600台にとどまっており、そのほとんどがハイブリッド車だ。

同庁は、国内自動車産業の現状と世界における電気自動車の開発動向を分析した結果、今後10年間で、ベトナムで電気自動車が普及する可能性が低いと結論づけた。その理由として、バッテリー寿命の限界、車体やバッテリーが高価であること、公共の充電ステーションがないことを挙げている。加えて、ベトナムの自動車市場はいまだ小さく、このことは電気自動車だけでなく、自動車産業全体の発展を妨げている。

物品税に関しては、ガソリン車やディーゼル車よりも税率は低いが、それ以外で、電気自動車の開発を促進させるようなインセンティブはほとんど実施されていない。

電気自動車の製造拠点誘致に向けた各国の競争は激しい。例えば、トヨタ自動車(タイ)は、約5億7000万ドル(約627億円)を投資して、タイにHEV(ハイブリッド車)のバッテリー工場を建設し、2020年に稼働を開始した。メルセデス・ベンツやBMW(タイ)もそれぞれ約1800万ドル(約19億8000万円)、約2100万ドル(約23億1000万円)を投入して、HEVやPHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(バッテリー式電動自動車)の製造拠点を設立した。

◇インセンティブ政策
VIA産業支援センターのグエン・ティ・スアン・トゥイ副センター長は、「最近の自動車開発戦略とマスタープランは、まだ電気自動車が少なかった2014年に政府が承認したものだ。近年の電気自動車の急速な発展に伴い、ベトナムには新しくかつ具体的な方策が求められている」と語る。

VIAは、電気自動車の生産・組み立て産業への投資を誘致する上で、ベトナムとASEANは対等の立場にあり、政府による優遇策や支援策がベトナムを優位に導くと述べる。電気自動車産業の発展には、従来の自動車メーカーの技術を集結させるとともに、ベトナムの交通インフラにも適合させる必要がある。

フランスの自動車業界で30年以上の経験を持つクオン・クアン・ドン博士は、「今後10年間、電気自動車の競争は激しさを増すだろう」と述べた上で、市場の拡大と生産・研究の促進によって、電気自動車の開発を加速するよう政府に求めた。電気自動車の開発動向を先取りすることで、ベトナムは世界の主要市場に追いつくことができる。

これらを実現するためには、消費者の需要を喚起し、自動車メーカーが安心してベトナムでの電気自動車生産に投資できるように、政府が支援策を講じる必要がある。

ベトナムは先進国と同様に、電気自動車の時代に入りつつある。この大きなチャンスをつかむためには、消費者と企業に対し明確な支援策が求められる。