ベトナム省計画投資省と国連工業開発機関(UNIDO)などはこのほど、持続可能な成長の実現のために、環境に配慮して運営を展開する工業団地「エコインダストリアルパーク」の実現にむけて提携すると発表した。今後3年で、ハノイ市、ホーチミン市、カントー市、ダナン市、ハイフォン市と、ホーチミン市に隣接するドンナイ省の6つの自治体で展開を目指す。

計画投資省などが先月20日、会見した。発表によると、計画の総投資額は計182万1800ドル規模となる見込み。当面は、スイス経済相経済事務局(SECO)を通じて提供されるスイスからの政府開発援助(ODA)163万8000ドルと、計画投資省の予算18万8000ドルで実現する。

エコインダストリアルパークの発展は、ベトナムの工業界を、環境面、経済面からだけではなく、生産能力の面でも劇的に改良すると期待されている。プロジェクトは、工業分野への環境配慮策の導入などに関する政策や規制を改善すると期待されている。

ベトナムの工業団地や工業地区は、ベトナムの社会経済の発展に大きく貢献したものの、環境問題という課題に悩まされ続けており、持続可能なモデルの早期確立が求められていた。実現するエコインタストリアルパークは、ベトナム独自の環境配慮型の成長戦略や、国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)や環境変動に関するパリ協定で目指す脱炭素社会などを2030年までに達成するというベトナム政府の約束などと方向性が一致するものにするという。

計画投資省のチャン・ズイ・ドン副大臣は、「工業団地での環境配慮を徹底し、持続可能な発展を目指すエコな運営へと変革していくことは、いまや世界的な流れとなっている」と、今回の提携に踏み切った理由を語った。

◇過去の試みの成功例を土台に
ベトナム計画投資省は2014~2019年にかけて、世界環境基金(GEF)、スイス経済相経済事務局、国連工業開発機関などを含む複数の団体と協力し、工業団地への環境配慮施策の試験的導入に取り組んだ。その成果は政策の深化に大きな影響を与え、革新的な技術や行動の変革実現につながった。例えば、エネルギー利用の効率化や、廃棄や汚染などを減らす生産手法の採用、工業と自然環境との調和を目指す「産業共生」の発想などが、初期には試験的に導入された。

これらの動きは、2万2000メガワットの電力節減、60万立法メートルの節水、140テラジュールの原油使用の削減につながった。また、化学物質や廃棄物の総量も3600トン減ったほか、年間の二酸化炭素排出量も32kt削減された。

◇ベトナム全土への拡散を
「ベトナムにおけるエコインダストリアルパーク―世界的傾向からの展望」と題された最新のプロジェクトは、国内でのこれまでの試みの成果を踏襲したものとなり、今後、国内各地に同様の施設を複製するための基礎となる。

計画には2本の柱がある。1本目は、エコインダストリアルパークを実現するための政策や方針を固めることだ。もう1本が、既存の工業団地からいくつかの施設を選択し、エコ配慮型へと転換させるためのより具体的な介入の実施だ。

これらの試みによって、法的枠組みをより適切なものへとブラッシュアップし、複数の企業を結び付け、既存の工業団地をエコ配慮型へと転換するさいの課題解決などの支援を提供できる。また、これらにかかわる技術や情報のデータベースの共有を発展させることが可能になる。

イヴォ・シーバー在ベトナム・スイス大使は、「国連工業開発機関と提携し、環境配慮型の生産手法やエネルギー効率の向上などを押し進めるベトナムのパートナーになれることを誇りに思う」と話し、持続可能な社会確立を目指すベトナムの支援を約束した。

また、国連工業開発機関のベトナム代表、タオ・レー氏は、「国際社会のこれまでの経験によって、エコインダストリアルパークの実現によってもたらされた経済、環境、社会保障上の利益は、従来型の工業や企業経営をはるかに上回るものだ」と強調。

この新プロジェクトによって、まずはディンブー工業地区(ハイフォン市)、ホアカイン工業地区(ダナン市)、アマタ工業地区(ドンナイ省)、チャーノック工業地区(カントー市)とヒエップフック工業地区(ホーチミン市)で、環境に配慮したさまざまな措置の導入を促進していくことを明らかにした。

この日はワークショップも開催され、ベルギー資本の工業団地で、すでに数々の環境への配慮策を導入しているディープシー工業地区(ハイフォン市)のブルーノ・ジャスペール社長が「ハイフォン市におけるエコインダストリアルパーク・モデルの構築」と題して講演。「ディープシー工業団地で行われている環境配慮の試みが、今の発展戦略をもたらしている」などと、環境のテーマが私企業主導の改革の原動力となっていることを強調。「持続可能な工業発展を目指すことが、今や必要不可欠で大きな時代の流れとなっている。これを理解した投資家らも今後、投資先として環境配慮型のビジネスモデルを選ぶようになるだろう」との予測を語った。