人材不足に直面する航空業界 需要増加に追い付かず

航空業界が人材不足に直面している。旅行人気の高まりや空港設備の拡大などにともない航空需要はますます高まると予想されており、パイロットやオペレーターなど専門分野の人材育成が課題となりそうだ。

写真㊤=タンソンニャット国際空港などの主要空港では、専門分野の人材に対する需要が高まっている(VNA/VNS)

「航空業界では現在、輸送や運航、空港の運営に従事する4万4000人が働いている。しかし、急増する航空需要に対して、労働力が追い付いていない。2030年にかけて、人材の需要はますます増加し続けるだろう」。航空分野の人材を育成するベトナム航空アカデミー航空運輸経済学部のチャン・チ・タイ・ビン学部長は訴える。すでにタンソンニャット国際空港やノイバイ国際空港、建設中のロンタイン国際空港といった主要空港や航空会社では、専門分野の人材への需要が高まっているという。

ベトナム空港公社(ACV)の報告によると、今年上半期、空港の利用客は約30%増加。国際線の利用者は、1440万人を超え、昨年の約5倍を記録した。上半期の国内・国際線の便数は前同期年比18%増の36万5000近くに上っている。うち国際線は9万9200便で同150%増と顕著な伸びを示す。同研究所のブイ・ソン・チュ所長は、「空港管制やエンジニア、グランドオペレーター、航空機の整備士、メンテナンスといった分野の人材が不足することになるだろう」と危惧する。

国際航空運送協会(IATA)の報告書によると、航空機を利用する人は今後20年で2~4倍増加するとみられ、業界にとって、将来的な人材確保は急務となっている。同アカデミーでは、大学院と大学の双方で航空サービスから輸送経済まで、航空に関するあらゆる分野の20以上の専攻科目の設置を計画。2022~23年には、整備士106人を含む2635人の育成を予定している。それでも業界全体の人材不足を補えるような数には届かない。

中でも深刻なのはパイロットだ。養成機関は、ベトナム航空訓練学校1校のみで、年間に育成できるパイロットは100人に満たない。民間航空会社の中にはトレーニングを行っているところもあるが、急増する需要に対しては十分とは言えない。こうしたなか、同アカデミーのハ・ナム・カイン・ジャオ副所長は、海外の大学や訓練機関と協力して人材育成することを提案している。

IATAによると、コロナ以前のペースで推移した場合、航空業界は今後20年以上にわたって178%の成長を続け、350億ドル(約5兆1100億円)の利益と、240万人の雇用を創出する。