新型コロナウイルスは社会経済的な状況とともに、各地で人々の暮らしにも重大な影響を与えている。だが、政府や関連当局の適切な対応によって、「消費者物価指数(CPI)を4%以下に抑える」という今年の目標は、達成の可能性が見えてきた。ベトナム統計総局のグエン・ティ・フォン局長が、ベトナム・エコノミックニュースのインタビューに答えた。

-今年1~8月のCPIは前年同期比1.79%増だった。これをどう分析していますか?

8月のCPIは前月比0.25%増で、2020年の12月と比べると2.51%増、同8月と比べると2.82%増となった。1~8月の8カ月のCPIは前年同期比1.79%増だが、これは2016~2021年まででもっとも低い増加率だ。

1~8月の物価指数の上昇は石油とガスなどエネルギー資源の国内価格高騰とともに、教育、コメ、さらにはセメント、鉄、鉄鋼、砂などの建設資材の価格上昇に伴うものだ。

逆にCPIを引き下げたのは、食品価格の下落と、電気料金の値引きなど、新型コロナで影響を受けた市民や製造会社などへの政府の支援パッケージの投入だった。

新型コロナの感染抑制策として、移動が制限されたことも、鉄道料金や航空運賃、ツアー旅行などの料金の下落につながった。

-8カ月間のCPIは低く抑えられたものの、ベトナムは今年年末から来年にかけて高いインフレが引き起こされるリスクがあるといいます。年間のCPI上昇率を抑え、4%以下の数値を実現するためには、何をすべきでしょうか。

新型コロナは各地で困難な状況を引き起こし、人々の生活や経済に影響を与えた。だが、政府は、同時に、さまざまな分野にまたがって感染拡大予防し、市場価格を安定させるための施策を導入した。これらの結果によって、2021年の目標であるCPI成長率を4%以下に抑えるということは、実現が可能だと信じている。

ただインフレは、今年の年末までは制御が可能だが、製造業の原材料コストの高騰や、財政や金融政策を緩和することで経済回復を促そうとする努力が響いて、来年はインフレが生じるリスクがある、というのが私の予想だ。そのため、インフレ抑制を来年以降も持続できるよう、統計総局では、関連する各省や部局、地方自治体などに対して、以下の6つの手法を実行に移すよう提案している。

一つ目が、需要供給のバランスを取り、生活必需品や必須サービスの安定価格維持を求めることだ。新たな需給関係の模索や貿易促進活動による市場開拓を継続し、国内消費を刺激し、商品の購入を加速させるために、需要刺激策の実施も必要になるだろう。

第2は主に、商工省と財務省に対してだが、国際的な原油価格を監視し、価格安定基金を適切に活用することで、価格高騰の衝撃がCPIに与える影響を最小限に抑えるようにしなければならない。

3つ目は、鉄鋼や建設資材などの主要な原材料の国内生産を加速させることと、それを輸出よりも国内市場での使用へと優先順位を変えることだ。また、これらの原材料の価格安定のために、当局による監視が強められるべきで、不当な価格高騰が生じないよう、規定違反などは厳しく対処にあたらねばならない。

第4に、牛、家禽類のエサや、養殖用魚介類の飼料などの価格を安定させる必要がある。家畜生産者には、生産コストを削減するためにも、輸入飼料のかわりに国産原材料も最大限活用するよう促したい。

第5は、ベトナム国家銀行に対する提案だ。国家銀行は、迅速にインフレに対応すると同時に、新型コロナの打撃を受けた市民や企業の苦境を取り除くための柔軟な財政政策を実施すべきだ。

最後が、情報通信省への要望だ。情報通信省は他の省庁などと連携を取りながら、人々の生活に密接に結びつく商品や生活必需品の価格を中心に、さまざまな価格管理についての情報を広く伝播していく必要がある。価格についての情報公開に加え、消費者の不安をあおり、市場を混乱させる懸念のあるような偽情報やウワサが広がることのないよう、監視や監督を強化してほしい。