いまや中間所得国に成長したベトナム。今後は、海外からの支援資金の流入よりも、民間金融機関からの借り入れに頼ることが増えることになる。海外から、さらなる投資を誘致するためにも、ベトナムは、政府や政府機関が発行する債券の格付けを高め、魅力アップを図る必要があると専門家らは指摘している。

◇国際評価は向上
ベトナムの民間企業だけでなく、政府もまた有利な条件での国際資本市場への参入を望んでいる。政府や政府機関が発行する国債などのソブリン債の国際評価を高めるため、ベトナムは国家予算の支出超過を減らすためのさまざまな手段を講じた。

また、負債の整理と管理を行ったことで、財政政策が強化され、台風や洪水の被害対策、疫病などのリスク対処などの自然災害対応に役立てることができた。その結果、国内総生産(GDP)に占める公的債務の割合は、2016年の63.7%から、2020には55.8%にまで削減された。

ベトナムは、ムーディーズ、S&P、フィッチの世界三大格付け会社と提携を結んでいるが、その三社すべてで、今年のベトナムの信用格付けの見通しが「安定的」から「上向き」に引き上げられたと、ベトナム財務省は胸をはる。

財務省の負債管理・外国金融局のチュオン・フン・ロン局長は、「ベトナムは今や中所得国になった。今後は資金調達の面で、商業ローンに頼ることが増えるだろう」と話す。その時に有利な条件で融資を得るためにも、国の威信を高め、海外各国からの投資家や企業から信用が得られるよう、国の債券の信用格付けを引き上げることが必要だと強調した。

◇求められる制度改革
国債や政府債などの信用格付けが引き上げられると、政府開発援助(ODA)を減らすことができ、政府や国営企業向けの資本調達におけるコスト引き下げにつながる。信用格付けを引き上げるには、ベトナムはさらに努力を重ね、具体的な計画や方向性の明示が求められる。

ベトナム国家銀行は、ベトナム国債などの信用格付けの引き上げが実現するか否かは、ベトナム国内の金融機関の財政状況や債務リスクの低減、国家予算の増大、国としての財政の透明性やデータなどの情報開示の実現などによるところが大きいとみている。

金融業界の専門家であるグエン・チー・ヒエウ氏は、「ベトナムはまだ世界から、『市場経済ではない経済圏』だと見られている」と話す。そして、ベトナムが「本当の市場経済を確立するためには、積極的な制度改革を推し進めなければならない」と指摘する。「目標達成のためには、経済再編のスピードを速め、国有企業民営化を加速し、国内外の民間企業がベトナム経済の心臓部に参加しやすい条件を作り出す必要がある」と強調した。

世界の信用格付け機関は、民間企業の経営環境を国の評価を見極めるための重要な指標としている。国の債権を格付けするにあたっては、ベトナム政府が抜本的な行政改革を継続的に進めていくことが重要になりそうだ。

ベトナム経済が海外からの様々な影響に耐えて、力をより強め、回復に転じるためには、いまだ多くの課題や困難が待ち受ける。新型コロナウイルスの感染拡大を押さえ込むことに加え、迅速に対処して、コロナ後の「ニュー・ノーマル」の実現に備える必要がありそうだ。