ベトナムで初めてとなるナノバイオ技術を応用した化学工場が、ハノイのタンロン北工業団地内に設立され、このほど本格稼働した。ベトナム伝統の医療や薬草学と最先端のナノテクノロジー、西洋医学の最新の新薬開発技術を組み合わせた画期的な試みとなるという。

ナノテクノロジーとは、原子や分子配列をナノレベルで制御し、物質の性質や機能を発現させる技術。ベトナムではまだ実用例は少ないが、世界的には液晶テレビやスマートフォンなどの製造過程に技術応用されている。

新設された「ベトライフ・ナノ・バイオ工場」(VNBM=Vietlife Nano Biological Manufactory)は、カム・ハー合資会社とベトナム化学技術アカデミーの研究者らが設立した。米国やオーストラリア、日本などの複数の研究開発機関と提携し、さまざまな技術を応用した最先端設備で、製造ライン3本に研究センターを併設する。ベトナム人科学者らが運営し、ベトナムの伝統医学をベースにした薬品や健康補助食品などの原料用新素材を製造・開拓する。

稼働式典では、ベトナム科学技術アカデミーの前委員長で、ベトナムのナノバイオ技術の第一人者であるグエン・ヴァン・ヒュー教授が、ベトナムと世界のナノバイオ技術の発展について紹介した。

それによると、米国では、2000年に当時のビル・クリントン大統領がアメリカでナノテク分野での研究開始を指示し、日本や韓国などもすぐに独自の技術開発を開始。ベトナムも比較的早い2002年には、ベトナム人科学者らが党と政府の認可を申請し、研究が始まった。

ヒュー氏は「ベトナムの同分野の研究開発は他の東南アジア諸国と比べても進んでおり、伝統医学とプロバイオティクス、医療とをうまく組み合わせた健康保健分野での成功例だ」と説明。ベトナムでの新たな科学調査や研究への道を開くと期待を示した。特に、このベトライフのナノバイオ工場は、「同分野のベトナムにおける試金石となる」と自信を見せた。

ベトナム科学技術アカデミー傘下の化学院で元副院長を務めたグエン・ズック・ニャー氏は、バイオ素材や薬剤、健康補助食品の製造、慢性病やがんなどの予防と治療など、伝統医療にナノテクノロジーを掛け合わせた研究が世界各地で展開されていると紹介。

ニャー氏は、ガック(ナンバンカラスウリの果実)からナノリコピンを抽出するなど、同工場で複数のナノバイオ製品製造に成功していることを披露した。中でもベトナム産ウコン(ターメリック)から抽出した有効成分クルクミンをナノ精製した「NDN22+」は、濃度40ppm の溶液を直腸がんや前立腺がんの腫瘍細胞に投与すると、72時間以内に100%の腫瘍細胞が死滅したという臨床前実験の結果が得られており、実用化が期待されている。