ハノイ市の青年が、バイクの部品などを利用して土地を耕したり、水をまいたりできる小型の万能農業機械を開発した。構想から完成まで9年がかりの力作。すでに、市場に約3000台が出荷されている。

青年は、チュオンミ地区に住むタ・ディン・ユイさん。ユイさんはこのほど、「エンジニアリングと農業への情熱から、年間を通して利用できる便利な万能農機を開発した」として、ホーチミン青年団などが顕著な功績を残した若者を表彰する「アウトスタンディング・ユース・フェイセス2016」を受賞した。

バイクの修理工をしていたユイさんが、農機のアイデアを思い付いたのは2005年。それからは仕事を終えると、農業に関する書物をインターネットで読みあさり、農家の労働効率を上げる機械の構想を練った。

設計図が完成すると、古いバイクのエンジンを購入し、どのように工夫すれば農機への転用が可能かを考えた。2カ月にわたる研究の末、土地を耕すことから、農薬の噴霧、水をポンプで揚げることまでできる機械を何とか完成させることができた。この1号機は隣人に160万ベトナムドン(約8000円)で売れた。

しかし、ユイさんは1号機のできばえに満足していなかった。2010年にはバイク修理店の仕事をやめて、農機の開発に専念。一緒に働いてくれる経験豊かなエンジニアを探し始めた。

1号機の構想から9年が経過した2014年、土を耕すことや溝作り、種まき、雑草抜き、農薬噴霧、潅漑など8つの機能を持つ多用途農機をついに完成させた。バイクエンジンとディーゼルエンジンを用いた万能農機の長所は省エネで、修理が容易なうえ、何よりベトナムの地形や風土に合っていることだという。

完成にいたるまでには数々の失敗も体験した。しかし、機械の完成だけを夢見て、ユイさんは昼も夜も通して働き続けたという。研究はその後も続けられ、最新バージョンは従来の倍近い15の機能を有する万能機へと発展している。ユイさんはこれからも、農家のニーズに応じた機械作りを続けていきたいと話している。