スマートフォン向けのゲーム「ポケモンGO」の配信が8月6日、ベトナムでも始まった。スマホでネットに接続し、GPS(位置情報)機能を使って、現実の環境に足を運び、画面上でモンスターを捕まえるというゲームは、ベトナムの大勢の若者たちの注目を集めている。


ポケモンGOに夢中になる若者たち

ポケモンGOはアメリカ、日本、オーストラリアなどですでに配信されており、ベトナムでも配信前から若者たちが注目していた。8月6日にこのアプリが正式にベトナム市場で提供されると、大きな盛り上がりを見せた。

たくさんの人がスマホを手に公共の場所や街中に出て、連日モンスターを狩る姿が見られる。ホアンキエム湖、文廟、クアンタン寺など、ハノイの観光名所などでも多くの人がゲームをしている。

ハノイに住むリンさん(29歳)は、ポケモンGOを始めてから、通勤時間が長くなった。「通常なら20分だけで着くのだが、今は1時間もかかる。途中でポケモンを見つけたら、バイクを止めて“狩り”に行っているから」だという。

ポケモンGOのブームは盛り上がりを見せ、ハノイのホアンキエム湖の周りでは、10人ほどのグループがいくつも散在し、夢中になっている。さらに、道路わきでバイクを止めてポケモンを取る人や、携帯用の予防電池をもち歩いて長時間、屋外でゲームに熱中する人なども見られる。

歩きながらスマホの画面にじっと見入って、手元で画面を操作しているのが、このゲームをしている人たちの特徴だ。SNSなどでは、屋台やコーヒー店、道路などでポケモンの狩りをする人たち写真が数多く掲載されている。



ポケモンを探し、スマホ画面を見ながら歩くプレーヤーたち

画面上でボールを投げる操作でポケモンを捕まえる時に、プレーヤーは一番興奮してしまうようだ。そのため、携帯の画面で操作するのではなく、実際に携帯電話を投げて、破損させてしまう人も。ポケモンを発見して、道路で急に立ち止まったり、画面を見ながら歩いて人や物にぶつかったりする例も報告されている。

このゲームの人気に便乗して、悪徳サイトなどもすでに現れた。無料のファイル共有ソフト経由で、簡単にこのゲームアプリをダウンロードできると誘うサイトを利用した若者が、ダウンロード後、携帯電話がウイルスに感染してしまうケースが多発している。

IT関連のセキュリティ会社、BKAVのゴー・アイン・トゥアン副社長は、「公式サイトではないところから、ソースが不明なアプリをダウンロードすると、悪意のあるスパイウェアが携帯電話に入り込んでしまい、それによってハッカーにメールアドレスやインターネットバンキングのアカウントなどの個人情報を乗っ取られてしまう危険性が高い」と指摘する。SMSやメッセージ、着信の履歴や会話なども流出する可能性があるという。

ゲームと現実がインタラクティブであるところが魅力

ハノイ教育大学心理学部のヴー・レ・ホア博士によると、ポケモンGOはゲームと現実を結びつけたところが魅力で、熱中しやすいという。そのゲームで要求を満足させられないとストレスが過剰になるなど、健康にも影響を及ぼしかねないと指摘するほか、怒りっぽくなったり、自分の行動を抑制できなくなったり、遊び過ぎが心理面にも変化を及ぼすリスクがあるという。

一方で、ホア博士は、ポケモンGOの利点も指摘する。

「従来のゲームとは違い、ポケモンGOは、ゲームをする人がじっと室内で座ったままというのではなく、外に出て、さまざまな場所を訪れ、行動が促される。例えば、うつ病などの患者に対しては、彼らが外出する良いモチベーションとなる。また、距離を予測したり計算したりする能力、観察力など、脳への刺激も与えられる」と分析している。