ベトナム南西部のおせち テトの食卓を彩る食材

テト(旧暦正月)を迎えたベトナムは、お祝いムード一色。家族や親しい人が集まり、新年を祝うおせち料理が食卓に並ぶ。おせち料理は、地域によってさまざま。 北部は繊細な料理で中部は手の込んだ料理、南部でも特に南西部地方になるとシンプルなことで知られる。バラエティーあふれる料理の中から南西部のおせち料理を紹介しょう。

料理研究家によると、南西部のおせち料理に欠かせないのは肉の煮込み、モヤシのピクルス漬けを添えたアヒルの卵、干しエビと野菜のピクルス、コールドミートパイ、新鮮なソーセージ、ゴーヤの詰め物、スープまたは寄せ鍋=写真1~3枚目。ドンタップ省出身のチャン・クオック・フンさんは、毎年、帰省して家族と一緒にテト料理を食べるのを楽しみにしている。祖父母の言い伝えによると、新年の初めに食べるゴーヤのスープは厄を払い、幸運を呼び込み、家族の平和と安らぎを約束してくれる。

一方、ソクチャン省出身のグエン・ミン・ダンさんにとって、テトを代表する食材はサラミに似た豚肉のソーセージ、ラプチョン=写真4枚目。 「ラプチョンはベトナムで幸運を表す赤色をしていることから、繁栄をもたらすとされています。また、その形が紐で吊るしたコインに似ていることから、富をもたらすとも言われています」。縁起ものの食材、ラプチョンはこの地域のおせちには欠かせないという。

素朴な素材で作る南西部のおせちは、調理法もいたってシンプルだ。その典型的な例が干物。「スルメや干しエビ、カエルやライギョの干物…。干物は手間いらすで、特段の準備が入らないので、多くの家庭で食べられています」(ダンさん)。

サイゴンプロシェフ協会のチャン・ティ・ヒエン・ミン副会長によると、南西部地域の料理は、日々の暮らしに密接につながっている。たとえば、おせちに食べるゴーヤのスープやアヒルの卵も、先祖へのお供えものとしてよく作られる料理だ。「それぞれの地域に、それぞれ多様な食文化があり、その中でも南西部は素朴であることが大きな特徴と言えます」とミン副会長は話している。