廃棄物処理への民間投資を求める地方自治体は、廃棄物からエネルギーを回収する技術に期待を寄せるが、この技術の運用には、多くの課題が立ちはだかっている。

◇ポテンシャルは大きく
天然資源・環境省によると、国内の固形廃棄物のうち71%が埋め立て処分されており、コンポスト処理(堆肥化)されているのは16%、エネルギー回収と組み合わせた焼却処分は13%にすぎない。

写真㊤=ゲアン省のホアンマイ廃棄物処理施設

だが、廃棄物からエネルギーを回収する技術は、欧州や日本で普及して環境汚染の抑制やエネルギーの再利用に役立っているが、ベトナムでの運用はいまだ限定的だ。

ハナム省やカントー市、クアンビン省ですでに稼働する廃棄物処理施設のほか、多くの地方自治体では、焼却炉の建設に向けて投資を進めている。例えば、ドンナイ省のビンタン処理施設の処理能力は1日600トンで、発電能力は30MW。ハノイ市のソックソン処理施設の処理能力は1日4000トンで、発電能力は75MWだ。同様のプラントは、フート省、ホーチミン市、ハイズオン省にもある。しかし、これらの事業の大部分は、投資手続き上の課題を抱えていたり、テストプラントのままであったりする。

◇不十分な政策
パワー・エンジニアリング・アンド・コンサルティング1(PECC1)のファム・グエン・フン社長は、「最新のエネルギー回収施設の建設には、多額の投資が必要であり、国の不十分な政策により企業は多くのハードルに直面している」と指摘する。

また、T-Techベトナムテクノロジーグループのグエン・ディン・チョン会長兼CEOは、「どのような技術を用いても廃棄物処理施設の発電効率は低く、最高でも30%。発電した電力の電力網への供給量も少ないため、投資を回収するには10年から20年はかかる。優遇政策のない状況では、この分野に投資家を呼び込むのは困難だろう」と語る。

もう1つの課題は、発電した電力の買取価格だ。2015年に商工省が出した通知によると、廃棄物処理によって得られた電力は、すべて電力業界に売却できると規定されている。しかし、新しく定められた電力買取価格は、固形廃棄物の直接焼却と埋め立て処分ごみから回収したガスの焼却にしか適用されない。現在、エネルギー回収においては、多くの新技術が生まれているが、これらの新技術の電力買取価格に関する規制はまだない。

このように、建設投資、土地税、電力買取価格、優遇政策に課題があるため、多くのエネルギー回収プロジェクトはまだ実現していない状況だ。