新型コロナ、水産業にもたらす影響とは=加工品の需要増に期待

中国は2019年、ベトナム産チャ魚(チャー=ナマズの一種)の最大の輸出市場であっただけでなく、ベトナム産小エビの4番目の輸入国でもあった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は、ベトナムの中国市場への水産品輸出に多大な影響を与えている。

写真㊤=2019年、中国はベトナム産チャーの最大の輸出市場だった

■対中輸出の減少
2019年、ベトナムから中国へのチャ魚の輸出は6億2270万ドル(約684億円)に達し、前年比で28.8%増加。チャ魚の輸出総額の31%を占めた。多くのベトナムのチャ魚加工会社は、成長の安定性、価格、市場の多様性から、今年も中国を潜在力の高い市場と捉えている。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大によって、中国では多くのファーストフード店やレストランが一時的に閉鎖され、国境地域の卸売市場も営業を停止したため、ベトナムの対中輸出に影響を及ぼしている。

昨年、ベトナム産小エビの輸出先トップ6の中で、中国が最も成長著しい市場だった。しかし、2020年第1四半期は、新型コロナウイルスの影響を受けて、小エビの対中輸出は減少するとみられる。

600トン以上の小エビを中国へ輸出する予定だった輸出業者の代表者によると、テトまでの間にその半分の量しか配送できず、残った数百トンの小エビは現在、冷凍保存されている。

ベトナム水産輸出加工協会(VASEP)によると、中国への水産品輸出のうち20%が国境ゲートを介した輸出であるため、国境ゲートの閉鎖により、今年1~3月期の水産品の対中輸出が、少なくとも20%落ち込む可能性がある。国境地域に住む人々の商品交換といった輸出と国境ゲートを介した公式な輸出の双方が、こうした課題に直面している。

■シェア伸ばす機会にも
だが一方で、VASEPは新型コロナウイルスの流行が終息した先に、明るい光も見出している。「流行が収まった後、中国の消費者の認識や食習慣が変わり、生ものよりも、安全性や衛生面が管理された小エビの加工品を消費する可能性がある」とVASEPは指摘する。

また、チャ魚に関しては、「企業が、国内販売や流通網を拡大する機会でもある」と述べる。一部のチャ魚輸出会社は、一旦流行が落ち着けば、ベトナムの冷凍チャ魚に対する中国の輸入需要は、長期にわたる貿易の停止を経て、急激に伸びるとみている。

したがって、ベトナム企業は市場の動きを注視しながら生産・輸出計画を適切に調整し、新しい市場を探しつつ、国内流通網を拡大していく必要がある。

VASEPの予測では、新型コロナウイルスの感染拡大が第1四半期に収まった場合、2020年の中国への水産品総輸出額は15億ドル(約1648億円)となり、前年比で5%増加する見込みだ。だが、感染拡大が8月まで続いた場合、総輸出額は約13億3000万ドル(約1461億円)にとどまり、前年比で6%の減少となると予測している。