タイの人々に愛されるベトナムのフォー=政府首脳も舌鼓

海外の「食」には手厳しいタイの消費者も、世界的に知られるベトナム料理の「フォー」は特別だとか。恐らくそれは、彼らに伝統的な麺料理を思い出させるからだろう。

■袋入りインスタントも好評
フォーは、ハーブや肉が入ったスープ入り米麺のこと。ベトナムの「ストリートフード」と呼ばれる一方で、政府首脳らもその味を愛してやまない。タイのジュリン・ラクサナウィシット副首相とベトナム商工省のド・タン・ハイ副大臣は、2019年にタイで開催された「ベトナムウィーク」(ベトナム商工省、セントラルワールド主催)を訪問した後、ショッピングセンターのフードエリアで座りながら、できたてのフォーを味わった。

2人にフォーを提供したのは、30歳のベトナム人シェフ、ヴー・ゴック・ズックさんだ。ズックさんはベトナムの食品をフードフェアに出品しようとバンコクにやって来たビジネスマンの1人で、彼は「タイのスーパーマーケットの棚をこれらの食品でいっぱいにしたい」との野望を持っている。

ズックさんのブースは、フードフェアのごく一部のエリアだったが、わずか2日間で500杯以上のフォーを売り上げた。来場者は栄養価の高いスープを飲みながら、その場でフォーがどのようにして作られるのかも見ることができた。

また、魅力はその価格にもあった。牛肉入りフォーは1杯79バーツ(約276円)、鶏肉入りフォーは1杯わずか59バーツ(約206円)とお手頃だった。

2018年にも同じイベントは行われ、その時は、ハイ副大臣とタイ商務省のソンティラット・ソンティヂラウォン大臣が、開幕日にフォーを楽しんでいる。

こうした調理された本格的なフォーとは別に、インスタントの袋入りのフォーもタイの消費者には人気だ。

フアイクワン区のトップス・マーケットでは、インスタントフォーの「VIFON」が毎日100から200袋売る。価格は1袋17バーツ(約59円)だ。ゼネラルマネージャーのピンジャイ・ナワヌコーンさんは、「当社のチェーン各店では、ベトナムから約500種類の食品を輸入しており、その数は毎年10%増加している。中でもベストセラーは、インスタントのフォーとコーヒーだ」と話す。

また、スーパーの利用客は、「フォーはスーパーマーケットで買うより、レストランで食べる方が一般的だった。スーパーで、しかもリーズナブルな価格で買えるのは嬉しいね」と声を弾ませた。

■ベトナムの国民食
ベトナムのフォーは、例えば、日本の寿司、タイのトムヤムスープ、イタリアのピザのような国を代表する料理となった。ベトナムウィーク2019では、フォーとビーフンに最も人気が集まった。

ハイ副大臣は、「毎年、タイで開催されるベトナムウィークでは多くのベトナム製品をタイの人々に紹介しており、これに伴ってベトナムからの輸出額も次第に増加している」と述べた。

厳しい競争の中で、ベトナムの農産物と食料品はタイで成長を遂げており、その背景には商工省とタイの流通・小売業者との緊密な連携がある。

タイのジュリン副首相は、「ベトナムウィーク2019では、経済関係の強化、商品・サービスの交換を通した投資・ビジネス面での連携において、ベトナム商工省とセントラルグループのビジョンと決意を見ることができた」と語った。

セントラルグループのベトナム輸出入部門のポール・ル副代表は、「消費者は常に、自分の好みに合った安全で良質な食品を求めている。特定の市場をターゲットにする場合は、地域の消費者の嗜好を満たすだけでなく、製品の核となる本質を維持して、自分たちの文化を世界へ持ち込む必要がある」と話した。