絶滅の危機を脱した古代ベトナムの伝統歌謡「ソアン」

ベトナムの伝統歌謡「ソアン(Xoan)」が、韓国・済州島で開かれたユネスコの無形文化遺産保護に関する政府間委員会の会合で、「緊急に保護する必要がある無形文化遺産」のリストから、「人類の無形文化遺産」の代表的なリストへ移された。2009年に無形文化遺産の登録が始まって以降、政府間委員会が、登録遺産の別リストへの移行を審査したのは、今回が初めて。

フート省の伝統歌謡であるソアンは、とりわけ若者にその理解が進んでいないことが危惧され、2011年、「緊急に保護する必要がある無形文化遺産」に登録された。政府間委員会は、その後、地域社会や国家当局が存続に向けて努力を続けたことで、ソアンの存続可能性が回復したと指摘している。

ベトナム建国の祖とされるフン王への崇拝と密接に関連するソアンは、ベト族の先祖崇拝に根ざした宗教行事である。伝統的に陰暦の1~2月に、寺院や公共施設といった神聖な場所で執り行われる。歌と踊りが組み合わさるのが特徴であり、歌い手らも相互に関わり合いながら演じている。ソアンでは、女優が中心的な役割を担う。

ソアンの歌には3つの種類あり、1つはフン王を称えるもの、もう1つは良作、健康、幸運を祈る村の守護神を歌うもの、3つ目は男女が交互に歌い求愛を表現するものである。

2010年に実施されたフート省文化スポーツ観光局の調査によると、古代ソアンの音楽は、同省ベトチ市にある4つの村(An Thai,、Thet、Phu Duc、Kim Dai)で受け継がれてきたが、陰暦の旧正月には、フート省とビンフック省の17の地域でも演じられる。

こうした中、2013年にソアンの伝統を復興させようとする計画が始まった。2020年まで続けられるこの保護計画によって、2011年にソアンを演じる人は約100人だったのが、現在は200人にまで増加し、またその平均年齢も60歳から35歳まで下がった。

保護計画では歌謡の練習だけでなく、ソアンに関する基金や祭りを創設したり、出版物やドキュメンタリーを製作したりすることも認められた。こうして過去6年間で、31のソアン音楽が集められ、ソアンに親しむ地域も拡大。現在では、33のソアン歌謡クラブが活動しているほか、ソアンに関するセミナーも開かれ、さらに多くのセミナーも予定されている。

フート省では、ソアンを演じる女優を表彰し、高校の芸術科目に取り入れるよう奨励する政策を進めるとともに、ソアンに関連する遺物の復元も行いたい考えだ。