名作「ビボ」、新作ミュージカルに 時代に翻弄される少女描く

現代ベトナム文学を代表する作家、グエン・ホアンの名作「ビボ(女泥棒)」の新作ミュージカル=写真、ハイフォン歌踊アンサンブル提供=がハイフォン市でこのほど上演された。1937年の出版以来、何度もミュージカル化されてきた作品だが、今回も豪華スタッフによる力作となった。

物語は、地域社会がベトナムと仏の二つに引き裂かれた仏統治時代が舞台。ギャングのボスにされてしまった少女タム・ビンの悲劇が描かれる。ベトナム人としての自尊心を持ち、正直に生きようとしながら、さまざまな困難に直面する人々を通し、愛と家族、友情、責任の大切さを伝える。原作小説は出版当時、大きな反響を呼んだ。

今回のミュージカルはハイフォンテレビの放送用アートプロジェクトの一つで、ハイフォン歌踊アンサンブルがプロデュース。脚本、作詞、ディレクターを務めた振付師、チュエット・ミンさんは、「脚本のオファーを受けてからすぐ、人民芸術家(優れた芸術家に与えられる称号)の振付師、カン・ホアさんにも参加してもらった。脚本家と一緒に原作や史実を参照しながら、振り付けを考えていった」と話す。その一方で、「ミュージカルには、原作に忠実にあると同時に、聴衆をひきこむような表現も求められる」とし、舞台ならではの趣向も凝らした。

作曲、編曲を担当した地元の作曲家、ルー・クアン・ミンさんは、「非常にチャレンジングな仕事でプレッシャーもあった。登場人物の悲しい感情を表現しつつ、それを聴衆が楽しめるミュージカルにしなければならないという難しさがあった」と話す。

冒頭、観客は過去にさかのぼる列車に乗り、あらゆる階層の人々が行きかう、1930年のにぎやかな港町へと到着する。当時は、貧困にあえぐ弱い人立場の人たちが、港でわずかな賃金を稼ぐために故郷を後にして出稼ぎに来ていた。多くの者は、生きていくうえでしかたなくギャングになった。しかし、彼らは必ず悪人というわけではなかった…。作品は6月29日、にハイフォンシアターで上演され、テレビでも中継され、話題を呼んだ。