進まぬドゥオンラム村の観光振興

ハノイ中心部から車ですぐの場所にあるソンタイ市ドゥオンラム村。文化的価値の高い街並みが残るにもかかわらず、毎年の来訪者はわずか17000人に過ぎない。

ツアーガイドの不在が課題
ドゥオンラム村は2006年に、国家芸術建築遺跡に登録された最初の村である。古くは、フン・フン(761-802)、ゴー・クエン(896-944)という2人の英雄を輩出した村であり、彼らの死後、人々は2人を祀る寺院を建立した。今も村には、400年の歴史を持つ家屋が保存されている。

例えば、ラテライト(紅土)で舗装された塀、レンガ造りの中庭といった特徴を持つ、古い瓦屋根の家々が残っている。住民は、濃くてどろっとした醤油、もち米で作られた甘いおかゆ、ピーナッツキャンディー、緑レンズ豆のケーキ、おもちといった伝統的な特産品を作っている。一方で、こうした特色のある地域でありながら、村は10年以上の間、効果的な観光振興策を実施できずにいる。

地元のツアーガイドがいないことも問題の1つだ。観光サービスで生計を立てているのは、住民のわずか10%に過ぎない。住民は、ベトナムの文化遺産に関する法律やドゥオンラム村遺跡管理委員会の規則を遵守するために、仕方なく古い住居を修復しているといった状況だ。

ドゥオンラム村モンフ集落に住むハ・ティ・ロイさんはVietnam Economic Newsに対し、「観光振興のために、古い家屋の保存を支援している」と語った。さらに彼女は、「地方当局は、こうした活動に住民の参加を促すべきだ」とも述べた。

課題解決に向けた市政府の取り組み
ソンタイ市政府は、住民の観光開発への参画を後押しようと、モンフ集落とカムティン集落をドゥンラム村の観光開発地域と定めるため、文化・スポーツ・観光省への申請手続きを完了した。

ソンタイ市はまた、職業訓練や雇用創出を支援するための適切な政策や仕組みを構築するほか、街からハノイ市バヴィ県やホアビン省、ビンフック省、フート省の観光地を結ぶ周遊旅行の企画にも集中して取り組んでいる。それに併せて、案内標識や地域の土産品を売る屋台も設けられる予定だ。

しかし一方で、ベトナム文化遺産協会副会長のダン・ヴァン・バイ准教授は、「ドゥオンラム村の文化的、歴史的価値の保全は、依然として効果が上がっていない」と指摘する。バイ氏は、古くからの村落を観光振興に生かすために、観光業と文化当局が共同で取り組んでいく必要があると強調する。

ソンタイ市は、2015年までにはドゥオンラム村の住民の少なくとも45%は、観光サービスに従事していると予測していた。しかしながら、3年を経た今、目標の3分の1に満たない程度にしか達成できていない。