10周年迎えた在福岡ベトナム総領事館 「人材交流のさらなる活性化を」 ヴー・ビン総領事インタビュー

さまざまな外交活動を展開する在福岡ベトナム社会主義共和国総領事館(福岡市博多区)が今年、創立10周年を迎えた。総領事館は、ベトナムと九州・沖縄8県の間の友好関係を樹立し、様々な側面からその充実に携わってきた。今年5月に就任したヴー・ビン総領事に、これまでの歩みや、今後の日越関係の展望などを聞いた。

―この10年間で、ベトナムと九州・沖縄地方の関係は、大きく発展しました。

ビン総領事
双方の協力は年月とともに深まり、連携分野も広がっています。これらの成果を示す数字がいくつかあります。ビジネス分野でいうと、ベトナムへ進出した地域企業は50社を超えました。このうち70%は「ベトナムでの事業を拡大したい」または「再投資したい」と考えてくださっており、九州・沖縄にとってベトナムが有望な市場であることを示しています。

貿易の伸びも著しい。2013年に20億ドルだったベトナムと九州の双方貿易額は、2018年には35億ドル規模に拡大しています。今はまだ、ベトナム側の貿易赤字ですが、技術やノウハウなど日本から多くを吸収しており、今後は日本の市場がベトナムに向けて開かれていくと期待します。

―九州地方とベトナムの結びつきが強まった理由は何だとお考えですか

ビン総領事
九州・沖縄の大きな利点は、ベトナムとの地理的な近さと歴史的な結びつきです。また、福岡国際空港や利便性の高い港などもあり、人や物の移動時間が短縮できる強みもあります。工業、ハイテク技術、製薬、農産物や食品加工などさまざまな分野の産業が集積していることも、ベトナムにとってはとても魅力的です。

この地域が、観光も含めた人の交流や外国人の受け入れに積極的だったということもあると思います。ベトナム航空は現在、ハノイ~福岡間を毎日運航していますが、昨年、福岡空港経由でベトナムを訪れた人の数は5万5800人にのぼりました。逆にハノイから福岡への便も、常に搭乗率が8割を超え、さらにニーズの高まりから、ホーチミン~福岡便も増便を検討しているそうです。

九州・沖縄に暮らすベトナム人も、今では3万3000人に達しました。10年前にはわずか61人だったベトナム人留学生も、現在は6000人を超えています。多くの企業がベトナム人の就労を歓迎し、日本の教育機関や大学が受け入れを拡大してくれた結果です。

―今後、特に力を入れたい分野は?

ビン総領事
人材交流です。人材というと労働力の面だけが強調されがちですが、私が思い描くのは、教育、職業訓練、雇用、さらには九州各地で働き、暮らすベトナム人と地域の人々との交流まで、多岐にわたる人材交流です。

私や総領事館の仕事は、人と人をつなぐ手助けをし、ビジネスに結び付けるなど、その関係に付加価値を与えることだと感じています。そのため、私が総領事に就任後は、九州各地への視察などの際に、ベトナム企業のトップらが、たびたび同行するようにしています。さまざまな機会を活用し、日本側との接点を増やすためです。

日越間で、文化や伝統、習慣や行動などの相互理解にも力を入れていきたいですね。仕事や生活上で生じる摩擦や問題の多くは情報不足と無知が原因です。相互理解は摩擦を回避し、双方の協力を充実させる最も効率のよい方法だと思います。ベトナム人たちが、周囲の日本人と協調し、幸せに暮らす支援にもなります。

その土台として、九州各地で暮らすベトナム人たちにコミュニティ形成を促したり、ベトナム語による防災情報の発信を試みたりしています。各地で自治体の皆さんらの助けを借りながら、さまざまな展開を行っていく考えです。

―節目の年に具体的に計画していることはありますか?

ビン総領事
この10年間でベトナムと九州・沖縄地方の協力関係は、実りある結果をもたらしました。これは私たち総領事館だけで成し得たのではなく、日本とベトナム双方の地方自治体、企業、親睦団体や個人の努力のたまものです。そこで、日越双方の努力を称え、感謝を伝えたいと、今月29日、福岡市内のホテルで、九州各地の自治体関係者や企業関係者、親睦団体などを招き、ベトナムからも要人が出席して、10周年記念式典を開催します。

これ以外にも下半期はさまざまなイベントを企画しているのですが、6~7月に行なわれた「ベトナム人青年サッカー大会」には、福岡県内外から20チーム、計300人が参加し、ベトナム人同士の結びつきと親睦を深めることができました。

今月31日には、皆さんにベトナムに対して親しみをもってもらおうと、交流イベント「1日ベトナム体験」を福岡市内で開催します。日本語が堪能な当領事館のスタッフが講師となり、伝統衣装アオザイの試着などを楽しんで頂く予定です。ほかにも、市民の注目を集めるような音楽や芸術の催しを計画しています。

―今後の抱負を教えてください

ビン総領事
このような交流企画は、周年だけの記念行事にとどめず、今後さらに充実し継続させたいと思います。個人的には、日越双方の一流芸術家の交流を、もっと見てみたいですね。九州・沖縄地方とベトナムの将来の見通しは、とても明るいと、私は思っています。実は、この地域での日越関係の発展に大きな可能性を感じていたので、自ら志願して、福岡総領事に就任しました。これまでの10年間に総領事館が築いてきたものを礎に、今後、日越相互の信頼関係をより強固にしたいと思っています。

総領事館は、九州とベトナムの連携の急速な拡大のため、現状の人員、設備だけでは仕事への対応が厳しくなってきました。近い将来、事務所の拡充や人員の増強を実現させて、人の往来やビジネス交流をさらに発展させるお手伝いがしたいと、強く願っています。

 

 

【在福岡ベトナム総領事館創立10周年の今後の主なイベント】
◇ 1日ベトナム体験~ベトナムの文化体験・交流イベント~ 
8月31日(土)、福岡市中央区天神1-1-1アクロス福岡3階こくさいひろば 
14:00~16:00(13:30受付開始)アオザイ試着、ベトナムの伝統楽器体験など
11:00~17:00 ベトナム絵画や陶磁器の展示
問い合わせ 開催事務局 福岡県国際局地域課092-643-3218

◇ベトナム伝統音楽演奏会
9月2日(月)、福岡市中央区天神1-1-1アクロス福岡1階円形ホール 
18:00     会場で受付開始
18:30~20:30 世界文化遺産「ハウ・ドン」…楽器、歌、踊りを一体化した伝統進行儀式の実演
  伝統的な弦楽器の演奏やアオザショー など
☆要申し込み、定員100人
参加者の代表者氏名とふりがな、代表者を含む参加人数の合計(大人と子どもの内訳も記入)
電話番号、e-mailを記入し、総領事館までFAX(092-263-7676)で申し込む

◇九州ベトナムの人材協力促進セミナー
9月3日(火)、九州経済連合会、アセアンJAPANセンターと共催

◇「1週間のベトナム映画祭」12月4日~8日(予定)