カンボジア野党党首、サム・レンシー氏に関する報道①~ベトナム‐カンボジア友好協会会長インタビュー

7月末に行われたカンボジア下院選挙で、野党「カンボジア救国党」が躍進した。ベトナム国内でもこの選挙についてのニュースは連日、メディアで取り上げられた。さらに、同党のサム・レンシー党首に関する記事も報じられた。そんなニュースの一部をクローズアップし、お伝えします。

サム・レンシー氏、その発言の意図は~ベトナム‐カンボジア友好協会会長に聞く

カンボジアの野党「カンボジア救国党」のサム・レンシー党首はベトナムの領土であるフーコック島について「ベトナムの領土でない」と発言した。その発言の根拠はなんだろう。フーコック島には大昔から、ベトナムの人々が暮らしており、それは周知の事実だ。VnExpressはベトナム‐カンボジア友好協会のヴー・マオ会長にインタビューし、サム・レンシー氏の発言について意見を伺った。

――サム・レンシー氏とはどのような人物であり、カンボジアではどのような役割を担っているのでしょう。さらにベトナムについてのサム・レンシー氏の見解と主張についても教えてください。

サム・レンシー氏はカンボジア救国党の党首です。この野党は7月28日の下院選挙で第2党になりました。フン・セン首相がリーダーを務める「カンボジア人民党」が第1党です。私は10年前にサム・レンシー氏夫妻がベトナムを訪問した際に歓迎することになりました。その時、サム・レンシー氏はカンボジアの国会議員。私はベトナム対外(外務)委員会委員長でした。

《ヴー・マオ氏はベトナム‐カンボジア友好協会会長(現職)、ベトナム‐カンボジア友好議員連盟会長でもあった。サム・レンシー氏夫妻の申し出に、ベトナム側が受け入れを表明。ヴー・マオ氏は「歓迎役」の代表者だった》

訪問時、わたしはサム・レンシー氏と様々な話をしました。彼はポル・ポト政権下のカンボジアで起きた虐殺から、多くの人々が解放されたことについて感謝の意を表していました。彼と彼の党(当時、サム・レンシー党)はベトナムとの友好関係に期待を示していました。
しかし、その後、彼の党が選挙で敗れた時、ベトナムに関して事実と異なる発言をしたので大変、驚きました。

――なぜ、彼はベトナムに敵対する主張を行うのでしょう?

ここ数年のサム・レンシー氏のベトナムに対する敵対的な発言や行動は、彼の個人的な意図によるものだと考えています。しかし、それはベトナムとカンボジアの(友好的な)関係を損なうものです。下院選挙で、自身がリーダーを務める党(カンボジア救国党)を有権者にアピールするための行動ではないか、とも感じました。

私はこのように考えます。「高度な教育を受け、政治家であるサム・レンシー氏は自分の良心に従って物事を正しく理解し、事実を尊重しなければならない」と。自分の政治的な目的や、自身の政党の目的のために「白」を「黒」に変え、事実を無視する。ベトナムをはじめ、他国に対する虚偽の発言はそうした行為です。

ベトナムは、「カンボジアが最も困難な時期」に力を尽くした国です。その国を中傷する発言と行動は、カンボジアの国民として、また、政治家としてふさわしくないのではないか、と考えます。

――サム・レンシー氏は最近、「フーコック島はベトナムの領土ではなく、カンボジアの領土だ」と発言しました。また「フン・セン政権は30年近くにわたって、ベトナムに(カンボジアの)領土を譲り渡している」とも発言しました。さらに「自分が首相になったら、カンボジアに住むすべてのベトナム人を追い出す」とも述べました。こうした発言をどのように思いますか。

「フーコック島がベトナムの領土ではない」という根拠はありません。ベトナム人はこの島に大昔から住んでいます、これは紛れもない事実であり、明確なことです。

ベトナムは他人の土地をわずかでも、たとえそれが「1インチ」であっても自分の物にすることはありません。このことを強く主張します。

また、「フン・セン氏が首相に就任して以来、ベトナムに土地を譲り渡している」という発言は事実ではありません。フン・セン氏について嘘を言ったことは良くない言動でしょう。

野党が、与党やフン・セン首相を批判することはあるかもしれませんが、事実に反することを述べるのは、良くありません。さらに他国(この場合はベトナム)に関する内容ならば、なおさらです。フン・セン氏も野党の発言に「事実ではない」と抗議した、と認識しています。

カンボジアが最大の危険にさらされていた時、ベトナムは困難や犠牲を顧みず、カンボジアの国民の皆さんの救命に向かいました。その時点で、カンボジアに向かったのは、ベトナムだけです。中国でも、アメリカでもありません。ベトナムだけです。それをカンボジアの国民の皆さんは覚えています。

フン・セン首相はじめ、カンボジアの皆さんは、ベトナムが人々の命を救ったことを覚えています。ベトナムの兵士がカンボジアを訪問した時、カンボジアの国民の皆さんは、ベトナムに対する感謝の気持ちを表していました。フン・セン首相自身、何回も、誠実にこう言いました。「私たちはベトナムと親しい関係であることを恥ずかしいと感じたことはありません」。

ただ、こうした状況や事情を、他の国々が十分に理解することは「難しい事なのかもしれない」とも感じます。

――今回の下院選挙の結果について、サム・レンシー氏が不正の調査を要求していることについて、どのように考えますか

これはカンボジア国内の問題であり、各政党が一緒に解決してゆくべき事柄です。第三者である他国や国際社会が干渉するべき事ではないと思います。フン・セン首相は今回の選挙が「民主的な選挙」、「公正な選挙」、「だれにも明確な選挙」であることを目標に掲げました。そのために、選挙のプロセスを調査することには賛成します。野党を尊重したことだ、とも考えます。

しかし、今回の選挙に強制的な面や不正があったとしたら、カンボジア救国党が、前回の選挙より多くの議席を獲得することが出来たでしょうか。疑問に思います。

私はサム・レンシー氏が選挙の不正を主張する時、自分の利益や自分の政党についての目的があるように思えます。発言には政治的な思惑があり、今回の選挙を利用して、カンボジアの国民の皆さんを刺激する意図があるようにも思えます。

こうした行動は一時的には利益があると思います。しかし、それは「真理」ではなく、正しい方向ではないように思います。たとえ一時的な勝利があったとしても、将来において敗北する可能性は消えないでしょう。

私たちはカンボジアの国民の皆さんがベトナムに対して愛情、または感謝の気持ちがあることを信じております。

――ありがとうございました。