ベトナムと米国の医療協力 新型コロナで関係強化 医療資材など米国に寄贈

ベトナムは保健衛生の分野において、長年、米国とよい協力関係を築いており、情報交換などの面で成果を上げてきた。今年に入ってからは、新型コロナウイルスの感染拡大対策などでも協力を展開し、先日、感染が拡大する米国へ、マスクや医療資材などの支援が行われた。また、これを契機に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などコロナ以外の感染症管理や予防医学の展開、先端科学技術の適応などで協力関係を深めている。

在米国ベトナム大使館は、アメリカの米国疾病予防管理センター(CDC)と定期的に情報を交換する関係を築いている。米国政府高官らは、感染を早期に押さえ込んだベトナムの新型コロナ対策とその努力を高く評価している。ベトナムは、南アジア諸国連合(ASEAN)議長国として、医療とコロナ対策の分野で、ASEAN―アメリカ間の協力促進の実現を、加盟国らへと働きかけており、国際関係上の視点からの評価も高い。

新型コロナ感染の拡大後は、医療物資の提供や、感染予防についての情報や経験の共有などによる相互支援をはじめ、拡大予防と制御でも、ベトナムはアメリカと効果的な協力を推し進めてきた。例えば、ベトナムは先日、数百万枚に及ぶマスクをはじめとした医療資材を、新型コロナの感染が拡大する米国へ寄贈し、首都ワシントンDCで式典が行われた=写真㊦。

ダニエル・J・クリテンブリンク駐ベトナム米国大使は、これに対して、新型コロナウイルスを早期に撃退したベトナムの優れた対応をたたえ、ベトナムの政府と人々に、感謝の意を表明した。クリテンブリンク大使は、「医療資材の提供は、両国の連帯感と支援の象徴だ。米国とベトナムの良好な関係に裏打ちされた医療分野での協力は、今後も発展し、継続するだろう」と語った。

CDCも、ベトナムにおける新型コロナ対策や予防措置、試験や調査、監視、データ分析などの感染拡大制御策のために、390万ドルを供出すると誓約した。

ベトナムにおける米国政府の保健衛生支援プログラムは、両国の国交が正常化した1995年以降継続的に行われてきており、米国によるベトナム支援の大きな部分を占めてきた。

一例としては、2005年に始動した米国大統領エイズ救済緊急計画(U.S. President's Emergency Plan for AIDS Relief: PEPFAR)で、ベトナムでのHIV感染者、エイズ患者の最大の支援組織となっている。また、季節性インフルエンザの予防活動に最大の支援を行っているのも米国政府であり、同時に活動は結核やマラリア、喫煙由来の呼吸器疾患、交通安全や食品衛生と食の安全などへと幅を広げてきた。現在では自然災害を未然に防ぐための活動や海洋の浄化、感染症の予防や研究なども、両国が共同で展開している。

さらに将来を見据えて、2019年には「世界健康安全保障アジェンダ(GHSA)」のもと、二国間の関係をさらに堅固にした。感染症や疾病の爆発的拡大や増加を予防し、非常時に最良策をとれるよう備えている。世界的な健康保健問題の対策にあたることは、米国とベトナムの2カ国だけでなく、地域や世界にとって有益となっているのだ。

米国CDCは今後さらに、ベトナムとともに、感染症の早期発見や発生源の探知▽病原菌の発見や適切な分析が行える研究室のネットワークづくり▽感染対策や拡大予防を実現する第一線の医療従事者らの増強▽感染後の効率よい対応を指示する緊急対応センターの設置―の4つの分野で、協力関係を深める考えだ。

今年1月の新型コロナウイルス感染の世界的拡大以降、CDCは、ベトナムの新型コロナ対策に力を貸しており、緊急対応への直接的な技術支援から、検体の移動運搬、検査の実施、感染経路の特定、市民への情報発信など、さまざまな側面で情報提供を行っている。ベトナムの保険省と協力のもと、感染症の専門家らへの訓練なども行われており、データ収集や分析、考察の研修を実施、医学的根拠にもとづいた政治的判断の手助けともなっている。

米国からの情報提供を受けた専門家らは、感染制御にかかわる国のガイドラインや手順の作成にかかわったほか、健康関連施設の準備、感染が疑われる患者の検査などと並行して、HIVなど他の感染症や疾病の積極的な治療も展開してきた。

新型コロナ感染に関していえば、米国CDCの活動の最終目標は、主要協力国や非政府組織などと協力し、人から人への感染拡大を抑制し、世界に与える影響を最小化することだ。この目的のために、CDCは、「今後もベトナムとの協力を深めていく」と明言している。