チャンス求め日本進出 活況のソフトウェア業界

ベトナムのソフトウェア業界にとって、今や日本は最大のビジネスパートナとなっている。外部委託先というポジションにとどまらず、支社や会社を設けるなど積極的に日本進出する企業も増えている。

ベトナムソフトウェア協会(Vietnam Software Association、略称: VINASA)によると、2007年、日本のソフトウェア関連企業の外部委託先の中で、ベトナムの企業が占める割合は、わずか1%に過ぎなかった。日本進出する企業も皆無だった。

それが14年には、日本にとって2番目に大きな外部委託先となり、翌年には、16億㌦(約1790億円)を稼ぐまでになった。ベトナムの企業の大半が、日本企業からの外部委託によって収益が増大したことはだれの目にも明らかだ。

アウトソーシングビジネスを展開するVBPO(ダナン市)は2011年、日本から外部委託でもうけたのはわずか100㌦(約1万1000円)だった。それがわずか4年後、100万㌦(約1億1000万円)を稼ぐまでになった。

日本貿易振興機構(JETRO)によると、ベトナムの産業界で、日本に最も投資をしているのはソフトウェア業界だ。10社以上のベトナムのソフトウェア企業が、支社や会社を日本に開設した。中でもベトナム最大手のIT企業、FPTは、2005年にいち早くFPT ジャパンを開設、パイオニア的存在となっている。

この10年間で同社の収益は、年32%増加。2016年1-10月には1億㌦(約110億円)の収益を得て、今や日本のITサービス関連会社の上位50位に食い込む勢いだ。

開かれた門戸

経済産業省のデータによると、日本の企業は年平均約300億㌦(約3兆3600億円)を、ソフトウェアやデジタルコンテンツに使っている。日本企業はこれらの仕事の外部委託先を、中国からASEAN(東南アジア諸国連合)諸国へとシフトさせつつある。

700社以上の情報サービス企業で構成する業界団体、情報サービス産業協会(JISA)は「日本の市場はベトナムの企業にさまざまな機会を提供している。日本企業は中国市場への依存を減らそうとしており、その代替国として、ベトナムが最右翼の位置を占めている」としている。

日立製作所や富士通、NTTグループといった大手は、製品を外部委託するためにベトナムの企業と提携している。もし、ベトナムの企業が、一定の資格や条件を満たし、日本語が話せるエンジニアを確保できるならば、日本で成功するチャンスがある。

情報処理や通信に関連するアドバイザリー会社、ガートナー・ジャパンの足立祐子・バイスプレジデント兼最上級アナリストは、「ベトナムの企業が、市場潜在力の高い日本でチャンスをつかむためには、質的量的な人材の充実と、技術レベルの向上を図るべきだ」と話す。

ガ―トナーによると、ベトナムは、外部委託先として、世界で最も競争力の高い国の一つという。人件費が安くインドの半分であること、人材面で他の国より安定していることなどが理由という。

ベトナムの企業が日本のソフトウェア業界の外部委託全体に占める割合は、まだ4分の1にとどまっている。最大の理由は、委託を受けるベトナムの企業の規模が小さく、人材不足になっていることだ。実際、従業員が150~200人規模のソフトウェア企業はわずか200しかなく、1000人規模のとこはFPTなどを含め10社しかない。