チュオンハイ自動車、200台超の完成車を輸出 同社最多の出荷

ベトナムの自動車メーカー、チュオンハイ自動車(THACO)は今月17日、韓国の自動車メーカー、起亜自働車の乗用車をはじめ200台を超える完成車両と、さまざまな自動車部品を、タイ、ミャンマー、日本や韓国へ輸出したと発表した。一回の出荷としては過去最大の規模で、同社が製造拠点を構えるベトナム中部クアンナム省のチューライ港から各国へと送られた。

出荷されたのは、チューライ工業団地内にあるチュオンハイ自動車の製造施設で組み立てられた乗用車とバス、セミトレーラー(牽引車の荷台部分)の完成車両。

同社が生産する起亜自動車のミニバン「グランドカーニバル」は、80台がタイへ輸出された。チュオンハイが提携するタイの自動車組み立て大手、ヨントラキット社向けの出荷で、同社と2019年12月に提携して以来、7度目の出荷となった。

一方、ミャンマーへは、起亜の乗用車、ソルート120台が送り出された。ミャンマーへのソルート車の輸出は6度目。

チュオンハイが製造する起亜の自動車は、韓国製と同等の高い品質を保ち、製造過程でもさまざまな世界基準を満たしているにもかかわらず、価格競争力があるとして、ASEAN諸国での人気がますます高まっている。

チュオンハイ自動車の2021年の自動車輸出目標は、計1480台。主な輸出先はタイとミャンマーだが、さらに市場を拡大する予定だ。将来的には、ASEAN地域における起亜自動車の完成車や部品の製造、輸出などの拠点になることを目指している。

一方、今回初めて、世界でも有数の厳しい品質要求で知られる日本向けに、自社THACOブランドのセミトレーラーが輸出された。製品は、日本の輸送機器メーカー、日本トレクス(愛知県豊川市)を通じて輸出した。日本トレクスは、セミトレーラー市場を徹底分析し、技術的評価を展開していくなかで、チュオンハイ自動車の高い能力に着目。同社と日本向けのセミトレーラーの製造輸出事業で提携することを決めた。

タイへは、世界でも最大規模の大型バスメーカーである、ボルボ傘下のボルボ・バス社を通じて、バスも輸出した。

ボルボ・バスがチュオンハイ製のバスのタイでの販売を決めたのは、やはり同社の技術や品質、安全性と価格優位性が魅力だったからだという。また、車両のデザインや大きさの規格などが、タイの基準や認定基準のほか、欧州経済委員会(ECE)が制定する規格をも満たしており、使用部品の60%超が現地調達されていることも理由だった。今回の輸出を皮切りに、チュオンハイは今年1年間で計66台のバスを、タイと韓国へ輸出する計画を立てている。

完成車やセミトレーラーの完成製品に加えて、多くの自動車部品も韓国へと輸出された。自動車の座席カバーやギアボックスのカバー部分、エアコン用ラジエーターのほか、現代自動車の製造するスポーツ用多目的車(SUV)サンタフェに使われる特殊コンポーネントなどが含まれる。これらの出荷は、金額ベースで約20万ドルに相当した。

2018年からASEAN地域内で完成車にかかる関税が撤廃されて以降、ベトナムに拠点を置く多くの自動車メーカーは、ベトナム国内での自動車組み立てをやめ、完成車の輸入販売へと事業をシフトした。だが、チュオンハイ自動車だけは製造を継続するだけではなく拡大に転じ、部品の現地調達も積極的に強化して、ベトナムの製造業や裾野産業を支えるためにも、「ベトナムでの自動車を製造と、東南アジアへの輸出を継続する」という戦略を貫いている。

今年のチュオンハイ自動車の目標では、タイやミャンマー、フィリピン、米国、日本といった既存市場への輸出を継続する一方で、ASEAN各国の新たな輸出先を開拓し、年間計2500台の完成車輸出を目指す。また、自動車部品やその他の機械製品などの輸出売上高は、3000万ドルに達すると見込まれる。

昨年以降、多くの自動車がベトナムから輸出され、ベトナム製自動車が海外市場でも十分競争できることが証明された。世界市場でのベトナム製造技術の認知を上げることにも、おおいに役立っている。今後チュオンハイ自動車は、ASEAN地域各国への輸出を増やすことに加え、アフリカや西南アジア、オーストラリアなども視野に入れて、市場拡大を積極的に進める方針だという。