外出禁止で人影消えたハノイの今 路上の体温測定や食料配布実施

ベトナムは4月1日から、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、不要不急の外出禁止などを中心とした「首相政令16号」を実施している。だが、16日現在、ハノイ市の道路は、政令実施当初と比べ、外出する人の数が増える傾向にある。危機感を持った同市当局は、路上での体温測定などで監視を強める一方、経済活動の停滞で困窮した人々への食糧の配布などの慈善活動も始まった。

ハノイ市街地に入る地区や郊外の村の入り口などでは、市などの責任者や公安関係者、交通警察、軍隊などのほか、ボランティアの青年団や医療関係者らが、通行する人々の体温測定などを行っている。通行する人たちは名前や住所などを確認され、マスク着用の規定に違反している人などへは注意喚起が行われている。ハノイ市タンチ―地区では、通行するバイクなどを止めて、体温測定が行われた=写真㊤。

ハノイ市も郊外一帯も、薬局やスーパー、コンビニやガソリンスタンド、食料の市場など、生活に必要な施設や店舗は通常営業している。一方で、レストランや飲食店、喫茶店などは閉店。ファストフード店は、持ち帰り商品の提供のみの営業が許されている。

これまで観光客でにぎわっていた文廟やタンロン城跡、ホアロー刑務所跡、玉山寺、ベトナム軍事歴史博物館など、市内各地の観光地や大型施設なども政令に従って閉鎖された。

市民の憩いの場だった西湖やホアンキエム湖、ティエン・クアン湖では、大勢の人が集まることを懸念し、湖畔や周辺の広場などでの運動が禁止に。周辺には、集団をつくらないことを訴えたり、マスクの正しい着用方法、新型コロナウイルスの感染予防などを伝えたりする案内板があちこちに設置されている。

一方で、市の緑化や清掃を担うハノイ都市環境会社とハノイ緑公園会社は、感染予防の措置をとったうえで、掃除やゴミの収集などハノイ市の環境整備を続けている。街路樹などの剪定のほか、見る人の姿もまばらな市内の緑地でも草花の手入れが続けられている=写真。

経済活動の停滞により困窮した人々を支援するチャリティー活動も広がりを見せ始めている。

チャン・ズイ・フン通り117番地の「0ドンスーパー」では、食材の無料提供を実施=写真㊤。ハノイ市コウザイ区、タイハー社の米倉庫では、毎日3~4トンのコメを無料で、貧しい人々に一人3キロずつ配布している=写真㊦。

また、国立経済大学では、同大学の学生がセンサー技術を使い、ボタンを押すとコメが出てくる装置を開発して設置した=写真㊦。顔認証システムを応用して不正な利用が防げるという。1日平均1400袋のコメを提供する。